寂しそうな顔。しょんぼりとした雰囲気が、落ち込んだ夕立にそっくり。
胸に切なさが宿った。彼女の落ち込んだ姿は、ほぼ双子に近い私でも甘えさせたくなる。それに似た、しかも提督の姿。妙に胸が痛むの。
分かってる。分かってるんだ。二人から色々と聞いてるんだ。
『提督はさみしがり屋だから、村雨とはいっちばん気が合うよ!』
白露姉さんは私との相性を教えてくれて。
『村雨。怯えなくても大丈夫だよ。だけど、不安を我慢出来なくなったら相談してね』
そっと寄り添う形で、時雨姉さんは私の弱さを許してくれた。
二人の姉さん達が、誰かを見誤る事はない。二人共とっても強くて、弱さを見せない人達なんだ。私みたく臆病じゃなくて、優しい人達だから。
それに甘いお菓子だって用意してくれた。美味しいコーヒーも飲ませてくれた。
話し合って柔らかな感じで、場を和ませようとしてくれたのに。むせた時だって、優しく背中を撫でてくれたじゃないか。
私の為に考えてくれたんだ。私の為に動いてくれたんだ。
怯えてるのは勝手な心。駆逐艦としての在り方に縛られて、軍神としての異名を押しつけて。威圧感に怯えながら、拒絶してるのは私じゃないか。
『提督の、ちょっといいとこ見てみたい!』
さすがに、こうやって言えはしないけど。
提督から行動してくれたのに、怯えて俯き続けるなんてやだ。
もっと仲良くなりたい。私を知ってほしい。駆逐艦・村雨としてじゃない。
ここにいる私として、貴方と知り合いたいんだ。
「その、提督?」
気まずい空気の中、どうにか出した言葉。声が仄かに震えてた。
ドキドキする。少しだけ不安が残ってるのに、楽しい思いだって確かにあるんだ。
ケーキ甘かった。ふふふ。我ながら食い意地が張ってる。
「どうした」
優しい微笑みで言葉の続きを待ってる。急かす感じもない。静かに待ってくれてる。
ちゃんと見たら、怖くないじゃない。
柔らかな表情と温かな雰囲気。日向みたいにほんわかとした人。
何度も、何度も心は躊躇ってるけど。それでも触れたい。話し合いたい。
私が愛する日常の一部。隣合って歩きながら、何の意味もなく過ごしたい。
不安だけど。だからこそ、私から勇気を出したいんだ。
「お散歩したい」
言えた! 言えたよ! 怒られないかな? 拒絶されないかな。
まだまだ怖い気持ちもあって、ゆらゆらと揺れてる。
「けど。ね。どう?」
それでも、出した言葉は引っ込めなかった。どうかな?
「付き合おう」
「…うん!」
静かな返答が何より嬉しくて、これからの時間に期待が膨らんだ。