提督と二人。いつものお気に入りの散歩コースを進む。
整えられた並木道。美しい森林をきれいな土道が通って、このまま進むと草原にたどりつく。
妖精さん達ががんばってくれた場所。少しでも、ここで過ごす皆の為にと。
自然を強く感じるこの場所が好き。提督も気に入ってくれたかな?
「きゃっ! か、風が強いですね」
強く吹いた風に髪が流れた。…スカートの中とか見えてないかな。ううん。見えそうだったら、提督から目を逸らしてるよね。エッチな人じゃない。
それにしても、とっても良い風だった。ちょっと良い気分。
こんな自然の空気も好ましい。緑の香りが良いの。
「風は嫌いじゃないな」
目を細めて静かに微笑んでた。私と同じで、提督も自然が好きなのかな。
良かった。これなら草原での時間も楽しめそう。ゆっくりしたい。それが私らしさ。私が好きな時間の過ごし方。
「ふふふ。涼しくて心地良いね」
のんびり穏やかに流れる時間は、胸をくすぐる良さがあるの。
そうして、二人きりで並木道を進んでく。
緑が風に流れる音。青空の澄んだ雰囲気。仄かに差し込むお日様が心地良い。
良い天気。お洗濯が捗るような。干したばかりのお布団はとっても良い。お昼寝も悪くないね。のんびり時間が素晴らしい。
過ごしやすい一日だ。こんな日は散歩に限る。急な思いつきだったけど、我ながらいい感じの提案だった。
「ふふ~ふーん♪」
楽しい気分をそのままに、鼻歌に乗せてみた。
…ちょっと恥ずかしい。バカだと思われてないかな。
「楽しいか?」
愛おしそうに笑ってくれた。嬉しいな。ふふふ。ちょっとずつ、本当にちょっとずつ近づいてるんだ。とっても良い気持ち。
くるくると回りたい気分。もっと知ってほしい気持ち。
「私、こういうのが好きなんです」
何でもない今日が好き。何でもなくないって、強く実感してるから好き。
いや。深い意味じゃなくても、戦争なんか関係なくても。
こうして過ごす時間の尊さ。確率とかの、難しい話は大げさだけど。
絶対に取り戻せないんだ。今という時間はいつだってかけがえがなく。
「誰もが忘れるような、通り過ぎる想いが好きです」
暖かい晴天。通り雨も美しく。…雨。雨の名前なんて素敵じゃない?
きっと、美しい想いを込めて紡がれた名前。私の誇り。そう在りたいと、駆逐艦・村雨で在りたいと願ってる。
ふふふ。なのに日常を愛してる。臆病者だけどね。
でも、今は不思議と悪くない気分。隣で微笑んでくれてる人のおかげかな。
あれだけ怖かったのに、徐々にでも良くなってる。ふふふ。良い気持ち。