「どこへ進んでいるんだ?」
当然の質問。それが出ない程度には、私も緊張…あれ?
提督からも言葉がなかったのは、お互いに緊張してた、とか。
いやいや。何で提督が緊張するの。そんなわけない。でも少しだけ、気分が良くなった。
「ん~? 大好きな場所!」
素直に言葉を返して、手を引きながら進んでく。きっと提督も気に入ってくれる。楽しみな感じ!
そうやって、二人で歩幅を合わせながら歩いて行くと。
目的に辿り着いた。――美しく切り開かれた草原の光景。
私の大好きな景色だ。風に小さく揺れる草原の美しさ。一本だけ、とっても綺麗に整えられた樹の佇まい。木陰は過ごしやすさと安らぎを、柔らかな草地は座り心地が良いの。
ここでお昼寝をしたり、夕立とかと追いかけっこを楽しんだり。
日常の象徴。私たちはここで日常を過ごしてきたんだ。
貴方に見てほしい。徐々に近づいた感情が、提督の心を求めてる。
「綺麗だな」
率直な言葉。素朴な響き。提督らしい言葉だと思った。
そう。そうね。とっても綺麗な景色だと思うよ。
日の光が暖かい開けた場所。森林の道を進んで辿り着いたから、余計に開放感を感じられる。妖精さんが考えたの? 素敵で心が躍る場所だと思う。
元気な妹達と来たら、思わず遊びたくなっちゃう。偶にだけど、川内さんとも遊んだり。神通さんも付き合ってくれた。
皆、この場所で日常を過ごしたんだ。本当に稀だったけど、響だって遊んだ事がある。
だからかな。提督にここを教えたくなった。気に入ってくれて良かった。
「ふふふ。私の一番好きな場所」
私が愛する日常の一部。もっと好きな場所がいっぱいあるけど、一番好きなのはここだよ。初日だから、ほぼ初対面に近かったから。
私を見せるならここだって、頭の中では思ってたんだ。
「少し休もうよ」
「ああ」
二人で草原に座り込む。シートでも持ってくれば良かったかな。
…でも、不思議と汚れとか虫なんかはないんだよね。妖精さんのおかげ? 良い感じに過ごしやすくて、憩いの場としてかなり良い感じ。
「良い天気。お弁当持ってくれば良かったね」
ぽかぽか陽気はお昼寝も良いけど、その前にお腹が空いちゃった。
お腹が鳴ったら恥ずかしい。海の上なら全然空かないのに、ちょっと不思議な感じ。陸で過ごしてると、人間な感じが強くなってる。
ふふ。…一応、区別的には人間じゃないんだけどね。可笑しな話。
「ただのんびりするのも悪くない」
「ん。そうだね」
こうやって緩い時間を二人で過ごすのは、とっても貴重だった。