「望んでも、良いの?」
兵器として在り続けた私たちに、日常を歩んでほしいって。
笑いながら、提督は言ってくれたんだ。言葉は続く。どこまでも優しい声で。
「俺がそうしてほしいんだ」
どこまでも率直で、堂々と胸を張った姿。
なぜだか世界への宣言にも聞こえて、不思議な感情が声に乗ってた。
「…えへへ。そっか」
笑みが零れた。これまでのやり取りで分かってたけど、とっても暖かい感じの人。
ここにいて良いんだ。こうして、誰かと笑い合うのを当然だと思っても良いんだ。
暖かな日常を愛してる。ありふれた想いを捨てたくない。平和を楽しんでる。
それに許しが加わって、胸がきゅ~っと切ない感じ。堪らなく嬉しい。
「だからこそ、楽しいと思える自分を許してほしいね」
困った様に彼が微笑んだ。なんとなくだけど、言う資格がないとでも言いたげな。
…私も大概だけど、提督だって妙に変な感じね。子供みたいに楽しそうなのと、大人の判断が合わさってる。ぎちぎちに固めた仮面を被ってるみたい。
誰だって、表面を取り繕うのは当たり前だけど。私も辛い時だって、皆に心配かけたくない。元気を装うけどね。
それでも違和感が酷い。窮屈そうに、それでいて面白そうに生きてる感じ。う~ん?
「平和を味わうからこそ、失いたくないと力を振り絞れるんだ」
ほら。この言葉も、無理に戦場を否定しなくて良いって。私の逃げ道を作ってくれてるんだ。なのに、どこか彼自身は責めてる雰囲気。
こうして許されて、いっしょにいて楽しいからこそ……ちょっともやもや。嫌な感じ。
私の感謝が伝わってるのかな。白露姉さんだって、それこそ時雨姉さんだって。
とっても楽しそうに、愛おしそうに貴方を語ってたんだよ。
こうして話し合いながら知り合って、私だって嬉しい気持ちでいっぱい。
ああ。だけど、本当に穏やか微笑みで言うから、口をはさめもしないじゃない。
「心。心だよ。心さえあれば人はどこまでも強くなれる」
人、艦娘を人と言ってくれるんだ。いや絶対にだけど、提督にとっては本当に人間で。
艦娘を、愛らしい少女だなんて言ってくれる。紳士に気遣ったり。白露姉さんの話だと、その、えっと…スケベだったり。
提督の内心は全部分からないけど、絶対に罪悪感だけじゃない。絶対に提督だって喜んでくれてるから、もやもやも気にしないでいこう。
胸に生まれた感謝の心と、これからへの期待も込めて。
「――ありがとう」
とびっきりの笑顔で、感謝の言葉を伝えた。