「ちょっと気恥ずかしかったけど、とっても嬉しかったよ」
あんまり抱きしめたりとかないけど。柔らかな微笑みが似合う人。
ふふふ。良い思い出。私も姉さんの支えになれてるなら、とっても良い感じ!
山風とかも、もっと甘えてくれたら良いのに。難しい。
「で、提督」
だからこそ、提督が何をしたのか知りたい。
傷つけたとは思ってないよ。実際、幸せそうに時雨姉さんは語ってたもの。
…ううん。それこそ、楽しそうだったから気になってる。
私も提督を楽しませてる? 一方的に許してもらって、ここまで何も返せてないよ。
お弁当とか作れれば良かったな。ふふ。嫉妬もあるのかも。
胸がどきどきして、わくわくしてる。楽しみで不安だったりする。
やっぱり、日常のお話が好き。こうして不安を楽しめるのが好きなんだ。
「時雨には言うなよ」
「もちろん!」
それから、提督の話を聞いてく。とっても愛おしそうな微笑みと、慈しむ声で思い出が語られてく。姉さんもだけど、何より提督が嬉しかったんだ。
甘えん坊になった姿。大切な人達を守りたくて、必死になって頑張ってる姉のお話。
時雨姉さんらしい。芯が強くて、儚げに微笑む姿が焼付いてる。
忘れないって良いながら、誰よりも先に消えてしまいそうな。淡く消えてしまいそうな人。
どうして頼ってくれないの、とは簡単には言えない。
佐世保の時雨が背負う想い。背負ってしまう想い。少なくとも、日常を愛する私が口を出していい所じゃない。
きっとだけど、そうして日常を愛する私や他の皆がいたから、時雨姉さんも頑張りたくなって。難しいね。平和だったら良かったのにね。
だけど、とっても胸が温かい。困った。でも良かった。
提督に甘えられたんだ。これからは、皆といっしょにもっと暖かくって。
「…そっか。時雨姉さんは守りたがりだからなあ」
強くなりたい。世界最強だとか望まないから。私が愛して、私を愛してくれる人を守れる位。この日常が愛おしくて堪らない。
ん。時雨姉さんだって、日常を愛してくれてるんだ。
皆ゆれながらも、必死に生きてるんだ。強くありたいよ。
「余計なお節介かね?」
「いやいや! もうっ、意地悪な言い方」
空気を変えようとしてくれたのは嬉しいけど、言い方を考えてよね。
お節介なわけないでしょ。大切な姉さんの覚悟が、暖かくて力が出てくる。
心。そうだね。心から力が出てくるんだ。暖かくて心地良い。
「ふっ。すまない」
とってもいじわるな笑顔。どことなく自慢げで愛らしい。
なんだか子供っぽい。意外な一面を見ちゃった。ふふふ。良い感じ。
「むう。なにそのドヤ顔は」