いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

137 / 322
一欠片の灯火です

「乙女が簡単に色事を許すんじゃない」

 よくよく見れば、提督の顔も赤くなってる。照れてるのって私だけじゃないんだ。

 提督だって、慣れなくても楽しんでくれてるの? ふっふっふ。良い感じ。

 

 もっと踏み込んでみよう。そうして心を触れ合わせたい。

「でもでも、経験は大事だと思うの」

 そういうのを知らないまま死にたくない。いつか、なんて思ってたら、知らないまま死んじゃうよ。そんなの嫌だ。怖い所もいっぱいあるけどね。

 

 こうして提督と知り合って、信頼出来る人だとは思ってる。

 軽薄な行動なのは否定出来ないけど。お互いに、触れ合えるなら良い事でしょう。

「興味があろうと、ちゃんと心身共に向き合える相手と添い遂げなさい」

 

 そう言われちゃったら返す言葉もないけどね。実際、提督の趣味とか知らないし。

 お菓子作りの腕はすごいけど、だからって彼を知りきってるわけじゃない。

 日比生 創。提督って言葉を剥がしたら、彼の名前はこうなってる。

 

 は、創。なんて呼べるわけない。こうして心で呼ぶのも躊躇う位。口に出そうとしたら、舌が緊張しすぎて困っちゃう。

「…そんなの待ってたら、いつか死ぬもん」

 

 残酷な言葉だとは思うけど、これが大体の艦娘の本音だと思う。

 事実、提督と関係を持ってる人は多いらしい。この鎮守府でこそ話は聞かないけど、激戦区ではそういう専門の人もいるとか。

 

 でも、本当は愛し合っての方が素晴らしい。

 だってそうでしょう。命を繋いで先を望めるなら、誰だってそっちの方が良いに決まってる。生きていくを出来るというのならば、日常を歩みたいに決まってる。

 

 赤ちゃんとかさ。人生を背負い合って生きていきたい。

 その相手に提督が……う~ん。想像出来ないや。だから、提督だって嫌と言うんだろうね。ちょっと反省。

 

「時雨にも言ったけど、そうならない為に俺はいるんだ」

 軍神としての在り方。見惚れる程格好良い笑みを見せて、威風堂々と宣言している姿。

 

 強い。びりびりと肌に刺さる圧力を感じる。切磋琢磨された指揮能力が、物理的に力を発揮してるんだ。

「逃げても良い。逃げた先にいる俺と響が、絶対に勝たせてみせる」

 

 ふふ。やっぱり提督の相棒は響なんだ。張り合うつもりはないよ。お似合いだとも思ってる。でもちょっとだけだけど。ほんのちょっとだけど。

 悔しいって、思ってる私がいる。自分でも驚く心。

 

 胸に闘志が灯る時なんて、死ぬまでないと思ってたのにね。

「…ありがと」

 素直に零れた感謝を受けて、また優しい笑顔で言葉が返ってくる。

「どういたしまして」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。