「それはそれとして」
空気を変えるように笑いながら、彼が言葉を続けてく。
「そこまで言ってくれた村雨にはどうしてもらおうか」
ほんっとうにやらしい笑顔で、わきわきと手を動かしてる。
これが白露姉さんの言ってたやつだ。絶対にそう。すっごくえっちな目をしてる。
でもでも、本当にはしないと思う。何だろう。…ちょっとどきどき。
「す、スケベなのは駄目なんだから!」
自分の顔が真っ赤なのは自覚できた。心臓の勢いも増してる。
緊張してるんだ。お、押し倒されたり? いやいや。そんなのって。
『村雨、俺の物になれ』
そ、そんなのって!! あわわ。ちょっと、ちょっと許容範囲外な感じ!!
嫌とかじゃないよ。分からないよ。どうしよう。ないだろうけどさ!
「くくく」
とっても意地悪で、楽しそうに笑ってる。こんな私の姿が見たかったって、見れて嬉しいって全身で教えてくれてる。
……むう。ちょっとだけ嬉しいし、こうして触れ合えるのは幸せだけど。
意地悪すぎる。怒った。怒ったもん。もう知らないからね。
「もうっ! やっぱり悪い感じ。提督の変態!」
じ~っと見つめて、提督からの言葉を待ってみる。
謝らないとだめだよ。私、ほんの少しだけ傷ついたり。真面目な話だからね。
「「……」」
じっと見つめ合ってる。彼からの言葉はない。
堪らない緊張感が広がってる。提督が楽しそうに微笑んでるからこそ、妙に言葉がつまちゃってる。謝る気配とかない。
私に嫌われても良いの? とか、恥ずかしすぎて言えないよね。
どうしよう。提督の我慢強さは知ってる。しかも、提督はこの状況も楽しんでる。絶対に自分からは破らない。
「…う、ううっ。あ、謝るなら今の内だよ」
軽く泣きそうになりながらも、更に言葉をぶつけてみた。
「この機を逃せばどうなる?」
悪戯な微笑。余裕のある姿。こうしていられると、相手の方が大人なんだってよく分かる。きゅ~って胸が切ないのに、楽しんでる自分もいる。
精一杯の勇気を振り絞って、受け止めてもらいたくて。
思いを言葉にするんだ。じゃれ合うように言葉を出す。
「嫌いになっちゃうから。私、もう提督を嫌いになっちゃうからね」
なれるのかな? 我ながらすっかり好きになってる感じ。
これで駄目だったら、本当に落ち込んじゃうよ。嫌いにまでならなくても、あんまり良い感じじゃないよ。
「それは困った。この通りだ。許しておくれ」
どこまでも余裕がある姿だけど、真っ直ぐに小さく頭を下げてくれた。
手のひらを合わせた謝る姿は、なんとなく柔らかい。ん。満足な感じだね。