「本当に反省してる?」
意識的にジト目を作って、今度は私が提督をからかってみる。焦らしてみる。
ふっふっふ。楽しい。ありえないと思うけど、提督が涙目になったら可愛いね。
『ごめんな。何でも言うことを聞くから、許しておくれ』
そんな展開になったら、頭を撫でてもらおう。そうしよう。
微笑みながら謝る提督も見てみたい。涙目な感じも新鮮だね。いっつも強くて頼れる感じだから、ふにゃっと緩くなるのも良い。
ふふふ。今度こそ簡単には折れないよ! …でも傷つけたくはなくて、難しい。
「すまなかった。申し訳ない」
深々と頭を下げてきた。土下座しそうな勢いだった。
あ、あれ? 雰囲気が重たいよ。真剣すぎる。これだと軽くないし、和やかな感じじゃなくて。ちょっと苦しい感じ。
どうしよう。私から何か言うのは変だよね?
「金輪際、君に舐めた事は言わない。敬意を払おう」
真剣な無表情。雰囲気が堅苦しくて、村雨への敬意が乗ってた。
私に対してじゃなくて、艦娘への言葉づかい。暖かくない。厳かな軍人の言葉。
こうして話し合うのもなくなるの…? ――やだ!!
「それも駄目! また意地悪を言ってるでしょ!!」
こう言ってから、提督の顔を見れば分かる。楽しそうに笑ってるもん。
彼からすればただからかってるだけでも、私からすれば重たい問題。
…提督ってさ。どこか自分を軽く見てるよね。私にとって、それに姉さん達にとっても軽くはないのに。断言出来るよ。
なのに、なのにさ。だめ。だめだよ。ちょっとだけ心が痛んでる。
「ふふふ」
普通に笑ってる。怒りとかも混ざってきた。もう心がぐちゃぐちゃ。
「う~!」
泣きそう。涙目になってきた。からかい返そうとしただけなのに、全然上手くいかなかった。むう。それで提督の心も見えたり。
真っ直ぐ柔らかな微笑みは、どこか自傷的だって。時雨姉さんみたいな感じ。今にも消えそうな儚いイメージ。
私の考えすぎなのかな? いやな感じだったかもしれない。う~ん。
「この通りだ。からかいすぎたよ。ごめんな」
今度は真面目に謝ってくれた。優しい。暖かい。
いやいや。そもそも提督からだよね。変に感謝するのもおかしい感じ。
堂々と胸を張って、彼の目を見ながら言葉を返す。
「…良いよ。許すから」
だからと言って甘い顔はしない。ここで甘くするとまた繰り返しちゃう。
「変に気遣ったりしたら嫌いになるからね」
しっかりと釘を刺してみる。どうかな?
「了解した」
大真面目に頷いてくれた。うんうん。良い感じに収まった。