「結局、提督はどうしてほしいの?」
なんだかちょっとだけ偉そうな言葉。提督がからかってくるから、不安な感じ。
むう。信じてないわけじゃないけどね。ふわふわしてる。
「子守歌を聴かせておくれ」
意外な提案は、眩しそうに空を見上げながら続く。
「こんなにも天気が良いから、ゆっくり眠りたいんだ」
よくよく見てみると、疲れきってるように見えた。
そうだよね。これまで激務だったんだ。そもそもここに来る前だって、かなりの激務だったはず。後遺症とかないのが不思議な位。
いや、私達には見せてないだけで、響とかは知ってるのかな。
う~ん。嫉妬…とまではならなくても。うん。もっと信頼されたい。
『いっちば~ん!』
なあんて笑いもしないけどね。ふふふ。頼りがいのある姉の姿が思い浮かぶ。
よっし。それならもうちょっと勇気を出して、からかうように彼へ問いかける。
「膝枕もつける? 提督は甘えん坊だもんね」
意識的にからかう笑みを見せてみれば。
「したいのか?」
堂々と真っ直ぐに見つめ返された。格好良い顔立ち。
「…しないもん!」
ずるいよね。そうやって微笑んでると、こっちまで嬉しくなっちゃう。
怒りがないとは言わないけどね! あんまりからかってると、こっちからも容赦しないんだから。覚えてるから。
「くくく」
でも、楽しそうに笑ってる姿は好き。ふふ。
「また笑った! お願いしてるのそっちなのに、もう」
「すまんすまん」
尚も楽しそうに笑ってる。うん。良かった。こうやってふざけあってるのは、良い感じかな。
「…正直、プロ並とかじゃ全然ないけど」
素直な話。趣味のレベルは超えてない。提督と違って、私は極めたりとかはしてない。遠征や訓練、演習とかで忙しかったからね。
そう考えるとさ。アレだけのお菓子を作れる提督は、すごいよね。日常を大切にしつつも、ちゃんと仕事も疎かにしてない。
からかってる時の微笑みと見てると忘れちゃう。ふふ。それもすごさかな。
「俺が聞きたいんだ。君の声で聞きたいんだ」
どこか敬意すら乗った言葉。今度はからかいとかじゃなくて、真っ直ぐに私を見て言葉を伝えてくる。
暖かい。今までのやり取りとは、少し種類の違う熱が灯ってる。
認められてる。求められてる。真っ直ぐに誤魔化しなんてない。
提督が横になった。結局、膝枕はなかった。ふふ。少し残念な感じ。
「草原に寝転がって日向ぼっこをするのも、悪くはない。そこに村雨の歌声があるなら尚更だ」
とっても眠そうな顔を見下ろす。気が緩んでいる証拠だ。嬉しい。
「そんなので良いの?」
「そんなのが良いんだ。君の愛した日常を俺にも楽しませてくれ」
自然な言葉。よし。いっぱいやる気が出てきた感じ!!
「ふふふ。なら村雨のちょっと良い歌声聞かせてあげる!」
「よろしくお願いする」