改めて、机を挟んで対面する形で座る。
長テーブルには春雨お手製のお菓子。クッキーである。
生地はオーソドックスにプレーン。仄かに感じるバターの香り。良いね。匂いが良いってのは最高だ。焦げたのも嫌いじゃないが、上手に出来ているのは素直に嬉しい。
「愛らしく作られているじゃないか」
全部、うさぎ型に作られてて愛らしい。見た目にも可愛いのだけど、これが彼女の手作りなのが更に良い。
「うさぎが好きなのか?」
「子供っぽいでしょうか」
どこか照れた様に、恥ずかしそうにはにかんだ笑み。まず此処で一度達した。嘘だ。
精神的にはね。しょうがないね。元気が有り余っているからね。
「趣味は人それぞれだよ。ただ、そうだな」
色々と状況を考えるに、俺はそろそろ死ぬかもしれない。ちょっと幸せすぎますね。白露型から、幸福を受け取りすぎているぜ。
「春雨の手作りで、しかもこれだけ可愛らしいと。飾っておきたくなる」
「…それは恥ずかしいので。食べてほしいです」
困りつつも嬉しそうな微笑み。可愛いぜ。
「ふふふ。了承した」
思ってみれば、手作りお菓子なんて人生で初めてかもしれない。
自作の? そんなモノの何が嬉しい。相手が喜んでくれるならともかく、自分で喰う為だけに作るかよ。
そもそも俺が菓子作りをしていたのは、皆が喜んでくれるからだ。まあ、那智にはウケが悪かったけど。アイツにはつまみが主だったか。
阿武隈とかは作りたそうにもしてたけど、日々に疲れていたからな。
ここに着任してからは、食事とかは響が用意してくれたけど。
さすがにお菓子とかもないし。そもそも彼女は、お菓子作りの経験とかはなかった。
女子力溢れる手製菓子。飲み物は紅茶で香り良く。不安そうに、それでいて期待した眼差しで見る春雨の姿も、この場のアクセントとして最高である。
ますます、クッキーへの期待が高まるぜ。
「では、いただきます」
「は、はい! 召し上がれ、です」
さくりと一口で一枚食べてみる。――美味い!!
何かこう……さくさくしている。食感が良いね。そんな感じだ。
己の糞雑魚グルメコメントに嘆きつつも、美味しいクッキーに大満足である。
自分で言うのも可笑しな話だが、純粋な菓子作りならば俺の方が上手い。
もう少し言葉を尽くすならば、大多数の人の好みを満たすだけなら、俺の方が優れている。
いやしかし。このクッキーのうま味はそうじゃない。
乙女の手作り。市販品とかならすぐに分かるさ。
そうだ。プロレベルじゃないからこそ、ご家庭で作る感じの、それでいて乙女力で上手く出来てるからこそ。
俺の胸に宿る感動を、喜びを紡ぎ上げてくれるんだ。
ああ。良いね。良いぞ。これが美少女の手作りか!!
万の言葉を尽くしても足りない。どう伝えれば、控えめな春雨が喜んでくれるのだろう。難しい。素直な感想を伝えよう。
「ありがとう。これで何も怖くない」「何の話ですか!?」