それから数時間。いちゃつく雰囲気もなく。当然なのだが、真面目に仕事を体験してもらった。
やる事は大きく変わらない。こうして経験したからこそ、彼女も分かってくれたと思う。時間的にそろそろ休ませたい。
指揮を除外したならば、提督は誰でも出来る仕事なのだ。責任が重すぎるだけでな!
…命を背負う誰でも出来る仕事。故にこそ人柄が重視される。もちろん、指揮能力やら妖精さんへの適性やら。色々とあるのだが。
あるのだが、心優しい人が選ばれやすい。
このクソッタレな状況で、尚且つクソッタレな在り方だよな。ははは。
艦娘にとっても残酷だよな。この世界の人達は優しすぎる。
さてはて。小休憩は良いのだが、どうしたものだろうか。
今日は徹底的に甘やかすと決めたからな! 覚悟してもらおうか。
そんな風に考えていると、お腹の音が鳴る。
「ぁ、う。ご、ごめんなさい」
顔を真っ赤にして俯く春雨萌え!! やろう、飛び道具を出してきやがった…!
「よく頑張っているから気にするな」
空腹は心身が結構な証拠。元気があって何よりさ。
ふっふっふ。とりあえず昼餉にしようかね。
普段通りの提督業の感じで、特に手間暇もかけず。間宮食堂からごはんをもらってきた。驚いた姿の間宮には悪いことをしたが、まあ良かろうよ。
さすがに握り飯二つとかにはしなかったけども。長テーブルに食事を並べて、春雨と隣り合う昼食の時間である。ふふふ。距離が近くて良い香り。緊張してきたぜ。
メニューは簡単な和定食。鮭の切り身焼き、みそ汁、ごはん、たくあん。これで良い。これが良い。
「「いただきます」」
隣合ってのお昼ごはん、いつもよりずっと美味しい雰囲気。ははは。最近だと、一人で食事を摂る方が珍しかったか。我ながら大した贅沢である。
「あ、美味しいですね。はい」
満足そうに微笑む横顔。あんまり見つめていると、照れてしまうかね。
その姿も見てみたいけど、俺も食事を進めよう。一口、鮭の切り身に手をつけた。
ほくほく塩味おいしいお魚。良いね。こういう簡単な調理にこそ、作り手の力量が現れるってもんだ。
「さすがは間宮達だ」
「ふふ。こう見えても、私も料理は得意ですよ」
対抗意識でもないだろうけど、発言が可愛らしすぎる。なんだ。これはあれか。俺から望んだら見せてくれるのか? 麻婆春雨を作ってくれるのか?
…特段、別に麻婆が好きなわけじゃないのだけど。彼女の名前が原因である。うむ。
「お菓子作りだけではないのか。頑張り屋さんだ」
「えへへ」
融かされる~! 良いねえ。何かこう…良いねえ。俺の思いを分かれ!
いやしかし。もっと先を求めるのが人の本音。もっと言えば俺の本音だ。
昼休み。ちょうど良いタイミング。そろそろ攻めるぜ!