「…じゃあ、ぎゅってして」
「うむ」
彼女の小さな体を抱きしめる。壊れないように、そっと力を込めるんだ。
柔らかな感触が不思議と気にならない。春雨の弱さを、脆さを見せてもらったからだろうか。壊れてほしくない。ここにいて良いんだと伝えたい。
「ほめて。いっぱい頑張ったから、今日の為に頑張ったから」
抱きしめている彼女の体が熱い。精一杯の勇気を振り絞って、俺へ望みを語ってくれた証拠。応えなければならない。何よりも俺が応えたいんだ。
「クッキー、美味しかったぞ」
ぽつり、ぽつりと今日の思い出を語っていく。
勝手な考えだけど、俺が思っていた感情を全て届ける。
「気遣ってくれたのも嬉しかった。本当に優しい子だ」
健康祈願とかね。本当に萌えたよね。死ぬ予定もないけど、生きる活力が得られたぜ。
「提督の仕事も頑張ってくれたな」
真剣な表情で書類仕事をする姿。春雨らしく。真面目に思い悩む姿、提督としても、俺個人としても好ましい。素晴らしい事なのだと思っている。
「皆を思って、仕事に取り組んでくれていたのを俺は見ていたぞ」
本当にな。慣れてきた俺では出来ない仕事。最適化と言えば聞こえは良いけど、少しばかり冷たい人間になっている。自覚はあるがね。
…出来事だけだと。この三つ位だ。もっと褒めたい。彼女の勇気に応えたい。
オッケイ。恥ずかしいけども、滅茶苦茶恥ずかしいけど。本気で語ろう。
「小さくて可愛い」
「えっ!?」
びくん! と、思わぬ動きで彼女が震えた。照れている。本当に想像してなかったらしい。ちょっと悪戯心。
抱きしめる力を少しだけ強めて、逃げられない様に耳元で。
ふっふっふ。――羞恥の心に落ちる道連れだ!!
「手入れの行き届いた桃色の髪が、撫で心地が良い」
さらさらしていて気持ち良い。よく手入れされているぜ。良い匂いもする。
「ぁ、ぅ、その…が、頑張って手入れしてるから」
「ん。撫でて良いか?」
「…どうぞ」
頭を撫でてみる。うん。やっぱり心地良い。良い髪質だ。
「くりっとした瞳が綺麗だな。ずっと眺めていても飽きないぞ」
感情を伝える紅色の双眸は、宝石よりも煌めいている。
欲情とかのエロエロは抜きにして、純粋に美しいと感じていた。
「司令官の目も綺麗だよ?」
「ありがとう」
頭を撫でる手をそっと下へ移動し、目隠しするように手を移した。
困惑する気持ちと、身を預けてくれている感じ。気を許してくれている。
優しく目蓋を撫でてみた。眉毛、睫毛の感触も良い。な、なんだろう。ただ褒めているつもりなのに、妙に色っぽくないか? 気のせいか?
ぺろぺろはしていない。セーフではなかろうか。
「声が良い。愛らしく、切なくなる甘い声色だ」
褒めるのを続ける。俺の本音を続ける。
「い、いっぱいあるんだね!」
限界が近そうだった。まだまだ。勝負の後は骨も残さない…!
「まだまだいっぱいあるぞ。そうだな」
「え、えっと! もう大丈夫! …はい」
止められてしまった。残念。
「そうか」