「ならば俺が、俺達が強くしようじゃないか」
運命的な台詞なんぞ言えない。ただただ、俺に許された狭い範囲で話を語るなら。
こう語るしかない。どれだけ絶望的な状況でも、苦境に立たされようとも。
強くなるしかねえんだよ。…おっと。些か乱暴な心が出てきた。落ち着こう。
「今弱いのだろう。戦場に呼ばれないのだろう」
駆逐艦の性能からして、戦いに運用するのは危なっかしい。
かといって、遠征などの後方勤務だけでは、彼女たちの心は安定しない。
戦果が欲しいわけじゃない。自分達だけ安全な所にいるのが、認められないだけなのだ。ほぼ全ての者達が考える事。
皆、個々人での悩みだけれど。艦娘全体の悩みとも言える。
寄り添いは個人ごとに。解決は全体をイメージして。難しいね。
「だから、己が存在を認められないと言うのならば」
俺は何度でも語り続けよう。君達の輝きを、艦娘の可能性を信じている。
そういう意味では、夕立との関係はむず痒い。夕立改二は壮絶な攻撃特化型。主観こそあれども、駆逐艦最強に至るのは、彼女だと俺は考えているのだがね。
響は不死身。不死鳥の名の通り。絶対に死なない。
敵をぶち殺す夕立改二と、絶対に負けない響。両者の在り方は違う。
とか言っておいてなんだけど、別に夕立の改二は確認されてないからな。うん。
「強くなれば良い。鍛えれば良い」
本当にそうとしか言えない。生憎だが、俺に誰かを説得する力はない。
偽りなく本音を話すしか出来ない。地道に鍛え上げることしか知らない。
本当は俺だって欲しかったさ。圧倒的なチート、運命力、愛される力。全部ないよ。ないんだ。そういう艦これ世界なんだ。しょうがねえや。
「駆逐艦が強くなれるの?」
「響を見ろ。鍛え続ければ、戦い続ければ確実に強くなれる」
劇的な進化なんてない。改に至れるかも分からない。それでも。
「一歩ずつ前に進もう。そうすれば、必ず先へ行けるから」
「…でも時間は待ってくれないよ。運命はいつだって残酷なんだから」
成程。その通りだ。よく実感しているとも。ならばと。
堂々と胸を張り、真っ直ぐに見つめる彼女へ。俺もまた力強い意思を込めて、これまでの経験すら込めて、圧倒するように言葉を紡ぐのだ。
「――その時は俺が全力で抗うさ」
あえて傲慢に語ろう。俺だからこそ、運命を潰してみせる。
深海棲艦共の巣が出来た? ならば響と潰してやる。イベント海域なんぞものともしない。此処まで戦い続けてきたんだ。
いや、というかさ。まだ戦うのか? もう良いだろう。いちゃらぶで良いだろう。
重すぎる世界観でなによりだ。ふぁっく。
「頼りにしてくれたまえよ」
「…頼りになりすぎますね」
にこりと微笑んで、いつもの彼女を見せてくれた。
これもまた劇的な解決なんて出来ず。ただ、ただただ彼女は歩み続けるだけ。俺はそっと寄り添っただけ。世知辛いね。
「これでも修羅場は潜ったつもりでね。抗う心は誰にも負けん」
妥協はなしだ。なあんて、不思議な模様のマスクをつけそうな台詞だが。
…妥協し続けてきた。最善を追い求めての妥協ってのは、心に傷をつけるもんだなあ。
「むう。私の悩みは、司令官への不信が原因だったのでしょうか」
まあ俺に絶対的な信頼を寄せていたら、特に気にせず生きていたのかもしれないがね。
春雨は彼女なりに生きているのだ。俺の盲目的な信者でもあるまい。
当然の悩みであり、当たり前の流れでもある。しょうがないね。
「さてね。俺の語りで少しでも不安が晴れたなら、何よりだが」
「ふふ。ありがとうございます。はい」