「うむ。仕事は少ないし、補助もしっかりとする」
大真面目な顔での言葉。裏とかもなく。純粋に、今日を過ごすための言葉です。
畏れ多いけど、興味深い提案。素直な気持ちを語るなら、司令官の仕事に興味はある。
…出来る事が増えていけば、少しは価値が増えるんじゃないかなって。
ああ自己嫌悪。司令官の好意さえ、善意さえ利用しようとするのだろうか。
どうしよう。またどこか暗い思いが生まれてくる。どうしようもない。はい。
「春雨が慣れてくれればそうだな。俺が休みやすくなる」
司令官の言葉は、渡りに船でした。
昂ぶる期待と不安を胸に抱いて、おっきな声で返事をします。
「や、やってみます!」「よろしく頼む」
改めて。司令官用の椅子に座って、執務が開始されます。
「何をすればよろしいでしょうか?」
ドキドキと胸が高鳴る。椅子の質が秘書艦用と変わらなくて。何となくだけど、司令官の性格が出ています。…もしかすると、秘書艦の方が良い物かもしれない。
特に意識もしないで。こうなってるんだから、司令官はそういう人なのだろう。ここまで話し合って、なんとなくは掴んでる。
「大まかな仕事はすませてある。前日提出された報告書を打ち込んでくれ」
「はい!」
目の前のパソコンに、データを打ち込んでいきます。
資材の変動。練度などの上昇。資材含めて、現在どれほどの戦力があるのか。
それらの情報を打ち込み続けます。司令官の言葉通り。大した情報はありません。
裏を返せば、ここまで安定するほど頑張った証拠。尊い結果を受け止めながら、静かに仕事を進めていきます。
穏やかに流れる空気の中で、司令官から声がかけられます。
「この鎮守府の目的は分かるか?」
「はい。資材の回収ですよね」
比較的平和な海域で、安定した資材の供給を目標としてる。
それと平行して、戦力として駆逐艦を運用するべく。日夜訓練に勤しんでる。
軍神と謳われる程の指揮能力。そうして、駆逐艦で唯一改二に至れた響。二人の特性を考えて、ここは駆逐艦の底上げも目的としてるんだ。
今のところ、大きな成果は得られてない。誰も改二へ至れず。はい。
「よく勉強している。偉いじゃないか」
だけど司令官は、焦りもなく無邪気に笑ってくれる。
「えへへ」
だから私も笑い返します。褒められて嬉しい。我ながら単純な思考。
調子に乗って言葉を続ける。
「任務の消化と、その報告も仕事ですよね」
「うむ」
満足げに頷いてくれたのを見て、私も満たされながら仕事を続けてく。