ほんわか、ゆるゆると流れる空気。適当にお話したり、段々とお互いを許容しあうと言うか、本当に徐々に自然さが生まれてく時間です。
そうして、のんびり暖かな食事を進めてると。
「実はだな」
唐突に司令官が言葉を出してきた。
「はい?」
さしこむような発言に、思わず呆けて問い返せば。
「秘書艦は提督の業務を支えなければならない」
神妙かつ真剣な眼差しでの言葉。どことなく重みも感じます。
どうしたのかな? 何か大切なお話があったのかな。
私も応えて、真面目な雰囲気で言葉を返します。
「は、はい。そうですね」
改めて言葉にするまでもなく。当然だと思う。
だからこそ今の状況が面白くて、どこか違和感もあるけど。悪い気分ではありません。ふふ。司令官デビューです。
「故にこそ。提督は秘書艦に甘えなければならないとも言える」
言葉を変えるなら、今の私は司令官に甘えないといけない?
だっこしてもらったり、ぎゅ~ってしてもらったり。――褒めてもらえたり。
い、いやいや。それは曲解しすぎなような。ただの、私の欲望でしょう。
「どういう意味でしょう?」
落ち着いて問い返すと。
「つまりだな――あーん」
司令官が思わぬ行動を、所謂恋人同士がするみたいに。
私に食べさせようとしてる。ああ、いや。はい。えっ?
「えっ、えっ!?」
ようやく心が状況を教えてくれました。気付きました。
今私は、司令官と変な感じになってます!
「嫌だったか…?」
しょんぼりと落ち込んで、目が虚ろになってる。心底から落ち込んでて、これが演技じゃないのは一目で分かりました。
う、ううっ。恥ずかしい。照れます。どうしてこんな事に。色んな想いはあるけど。
「ん」
食べてさせてもらいました。…ああ。暖かい。同じ料理を食べているのに、何も素材は変わってないのに。
とっても嬉しそうに笑う司令官を見てると、より一層美味しくなってる。
「…不思議と、食べさせてもらうと一層美味しいです」
「うむ」
満足げに落ち着いてる姿。ニコニコと笑う顔は、無邪気な子供みたい。
兄みたく、そうして弟のような矛盾した人。いやいや。司令官です。それは、分かってるのだけど。
ちょっとだけ、ほんの少しだけ勇気を出して踏み込んでみよう。
「ではその。司令官は逆に、秘書艦にご褒美をあげるべき。ですよね?」
我ながら大胆な発言でした。でも、今更止まれないし。
何より自分自身が、初めて止まりたくないと思ってる。
「うむ?」
「あ、あーん」
今度は自分から、司令官へと動き始めました。