いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

165 / 322
甘くとろけはじめてます

 ほんわか、ゆるゆると流れる空気。適当にお話したり、段々とお互いを許容しあうと言うか、本当に徐々に自然さが生まれてく時間です。

 そうして、のんびり暖かな食事を進めてると。

「実はだな」

 

 

 唐突に司令官が言葉を出してきた。

「はい?」

 さしこむような発言に、思わず呆けて問い返せば。

「秘書艦は提督の業務を支えなければならない」 

 

 神妙かつ真剣な眼差しでの言葉。どことなく重みも感じます。

 どうしたのかな? 何か大切なお話があったのかな。

 私も応えて、真面目な雰囲気で言葉を返します。

「は、はい。そうですね」

 

 改めて言葉にするまでもなく。当然だと思う。

 だからこそ今の状況が面白くて、どこか違和感もあるけど。悪い気分ではありません。ふふ。司令官デビューです。

「故にこそ。提督は秘書艦に甘えなければならないとも言える」

 

 言葉を変えるなら、今の私は司令官に甘えないといけない?

 だっこしてもらったり、ぎゅ~ってしてもらったり。――褒めてもらえたり。

 い、いやいや。それは曲解しすぎなような。ただの、私の欲望でしょう。

 

「どういう意味でしょう?」

 落ち着いて問い返すと。

「つまりだな――あーん」

 司令官が思わぬ行動を、所謂恋人同士がするみたいに。

 

 私に食べさせようとしてる。ああ、いや。はい。えっ?

「えっ、えっ!?」

 ようやく心が状況を教えてくれました。気付きました。

 

 今私は、司令官と変な感じになってます!

「嫌だったか…?」

 しょんぼりと落ち込んで、目が虚ろになってる。心底から落ち込んでて、これが演技じゃないのは一目で分かりました。

 

 う、ううっ。恥ずかしい。照れます。どうしてこんな事に。色んな想いはあるけど。

「ん」

 食べてさせてもらいました。…ああ。暖かい。同じ料理を食べているのに、何も素材は変わってないのに。

 

 とっても嬉しそうに笑う司令官を見てると、より一層美味しくなってる。

「…不思議と、食べさせてもらうと一層美味しいです」

「うむ」

 

 満足げに落ち着いてる姿。ニコニコと笑う顔は、無邪気な子供みたい。

 兄みたく、そうして弟のような矛盾した人。いやいや。司令官です。それは、分かってるのだけど。

 

 ちょっとだけ、ほんの少しだけ勇気を出して踏み込んでみよう。

「ではその。司令官は逆に、秘書艦にご褒美をあげるべき。ですよね?」

 我ながら大胆な発言でした。でも、今更止まれないし。

 

 何より自分自身が、初めて止まりたくないと思ってる。

「うむ?」

「あ、あーん」

 今度は自分から、司令官へと動き始めました。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。