ゆるく流れる昼食後の時間。お腹いっぱいの暖かさと、仄かな眠気で微睡むような。
とても穏やかな時間です。隣同士で座ってるので、なんとはなしに司令官の顔を見てしまいます。
こころなしいつもより柔らかく。ちょっとだけ眠そうです。はい。
可愛い。こうして落ち着いてると、本当に優しい顔立ちをしてます。
「俺の顔に何かついているか?」
ニコニコと優しい笑顔。真っ直ぐに私の目を見つめてきます。
曇りない黒目。奥底には陰りが見えるけど、初めて会った時より明るい眼差し。本当に司令官は明るくなりました。
「い、いえ。その、はい」
上手に言葉を返せない。先程のやり取りもあって、妙に照れてしまいます。
…司令官は唐突すぎるんです。なんて、責めるような気分になるのも。
「ふふ。今は春雨が提督なのだから、俺に気を遣いすぎる必要はない」
そうです。私が司令官を担当してるから。はい。
やり始めた頃よりは慣れましたが、まだ仄かに緊張が残ってます。
「望みがあるならば命令すると良い」
「えっと、その」
目の前にいる人へ望んでも良い。そんな状況が初めてで、恐縮するばかり。
大好きな姉妹達にもそうですけど、私は遠慮する事で生きてました。姉達は、たまに寂しそうでしたが。基本的にはそうしてます。
でも、今は違う。甘えてこそだと彼は語る。どうしよう。
「先程の食事もそうだ。提督は秘書艦に甘える。その代わりに仕事が出来る」
「そういうものですか」
「そういうものさ」
アレは違うような。若干、司令官の好みが入ってた気もします。
悪い気分でもないけど、恋人っぽい。夕立姉さんならきっと。
『二人は仲良しっぽい!』
と笑いながら騒ぎ始めるでしょう。愛らしい姉さん。
ふふふ。今だけは姉さんの真似をして、素直に甘えられる自分でありたい。
「では、その」
がんばって言葉を返そうとする私へ。本当に優しい笑顔で司令官が言います。
「何でも良いぞ。肩もみから買い出しまで」
続く言葉は妙に気取ってて、なのに似合う格好良い表情で。
「今日一日全てを使って、貴女を支える紳士になりましょう」
「…一日だけですか?」
今日が終わったら、また認められない日々が来るの? 司令官には褒められないの?
――ぽつりと零れた言葉は、とっても恥ずかしい心を伴ってました。
「ふふふ。望むのならばいつまでも」
き、消えてしまいたい。慌てて訂正します。
「じょ、冗談です! …はい」
「そうかね」
見透かすような静かな黒目は、私の奥底すら見ているようでした。