「俺は大丈夫だ」
優しい微笑みを浮かべたまま、自然な流れで断られた。
とっても自然で、繋ぐ言葉が思いつきません。
「あ、そうですか」
今の司令官の感じは分かります。でも、もっと近くにいてほしい。
もっとお話ししたい。願ってしまうのは、私の我儘だよね。せっかく司令官がこうしているのに、どうして、今日の私はこんなに我儘なのでしょう。
姉さん達の話が羨ましかったから? もっと、もっと望んでしまうの?
これはいけません。いけないことです。そうでしょう。そうに決まって。
「…しかし、立ちっぱなしも疲れた。隣に座っても良いか」
「もちろんです!」
こ、心が読めるのでしょうか。いえ逆に読んでくれたのならば、司令官からの気づかいです。嬉しい。えへへ。
こんなに甘やかされて良いの? 不安と期待が膨れ上がって、どんどん胸が高鳴ります。暖かい。もっと。もっと、望む心が止まらない。
司令官が隣に座ってくれる。でも、お互い端っこに座ってるから。ぽっかりと真ん中が空いてます。私から行っても良いけどね。今は、司令官から動いてほしいな。
「もう少し近くに座りましょうよ」
大胆に言葉を出してみると。
「そうだな」
特に動揺や躊躇もなく。司令官が距離を詰めてくれました。
肩同士が触れ合うほどの近い位置。じんわりと彼の体温が伝わるみたい。
息が聞こえます。耳を澄ませば、心臓の音すら聞こえる気がして。生きてる。そうだ。お互いに生きてる。
ただ距離を近づけただけなのに。喜びが一気に増していて。
我ながら単純だなって。笑いそうになる。
「えへへ。良い距離感ですね」
思わず言葉が零れちゃいました。ちょっと恥ずかしい言葉です。変な発言です。
恐る恐る司令官を見ると、仄かに照れた風な微笑み。ふふ。珍しい表情。なんとなく可愛らしくて、いじわるしたくなる。そんな顔。
「次は、えっと」
もっと、なんて望んだのだから。精一杯の勇気を振り絞りましょう。
この時間を与えてくれた彼と、この時間で得た想いを教えてくれた姉さん達。皆の心に、私なんかが望んでるのだから。
緊張でぎこちなくなるのは分かってて、不安で、怖くて。でも。
「か、肩を揉んで。なんて。あの、その。…はい」
恥ずかしすぎる甘えの言葉を出しました。我ながら、何様なのでしょう。
司令官の方がお疲れです。何より、艦娘に触れるのなんて嫌でしょう。誰が好き好んで、己をあっさりと殺せる者に触れたがりますか。
怖いはずです。軍神とさえ言われていても、司令官は人間なのですから。
…でも、姉さん達は触れ合ってもらった。だから私も。
「遠慮する必要はない。喜んで揉ませてもらうよ」
返答は期待を遙かに超えて、とても柔らかな響きが乗っていました。