いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

169 / 322
知らぬ内の勘違いです

「俺は大丈夫だ」

 優しい微笑みを浮かべたまま、自然な流れで断られた。

 とっても自然で、繋ぐ言葉が思いつきません。

「あ、そうですか」

 

 今の司令官の感じは分かります。でも、もっと近くにいてほしい。

 もっとお話ししたい。願ってしまうのは、私の我儘だよね。せっかく司令官がこうしているのに、どうして、今日の私はこんなに我儘なのでしょう。

 姉さん達の話が羨ましかったから? もっと、もっと望んでしまうの?

 

 これはいけません。いけないことです。そうでしょう。そうに決まって。

「…しかし、立ちっぱなしも疲れた。隣に座っても良いか」

「もちろんです!」

 

 こ、心が読めるのでしょうか。いえ逆に読んでくれたのならば、司令官からの気づかいです。嬉しい。えへへ。

 こんなに甘やかされて良いの? 不安と期待が膨れ上がって、どんどん胸が高鳴ります。暖かい。もっと。もっと、望む心が止まらない。

 

 司令官が隣に座ってくれる。でも、お互い端っこに座ってるから。ぽっかりと真ん中が空いてます。私から行っても良いけどね。今は、司令官から動いてほしいな。

「もう少し近くに座りましょうよ」

 大胆に言葉を出してみると。

 

「そうだな」

 特に動揺や躊躇もなく。司令官が距離を詰めてくれました。

 肩同士が触れ合うほどの近い位置。じんわりと彼の体温が伝わるみたい。

 息が聞こえます。耳を澄ませば、心臓の音すら聞こえる気がして。生きてる。そうだ。お互いに生きてる。

 

 ただ距離を近づけただけなのに。喜びが一気に増していて。

 我ながら単純だなって。笑いそうになる。

「えへへ。良い距離感ですね」

 思わず言葉が零れちゃいました。ちょっと恥ずかしい言葉です。変な発言です。

 

 恐る恐る司令官を見ると、仄かに照れた風な微笑み。ふふ。珍しい表情。なんとなく可愛らしくて、いじわるしたくなる。そんな顔。

「次は、えっと」

 もっと、なんて望んだのだから。精一杯の勇気を振り絞りましょう。

 

 この時間を与えてくれた彼と、この時間で得た想いを教えてくれた姉さん達。皆の心に、私なんかが望んでるのだから。

 緊張でぎこちなくなるのは分かってて、不安で、怖くて。でも。

 

「か、肩を揉んで。なんて。あの、その。…はい」

 恥ずかしすぎる甘えの言葉を出しました。我ながら、何様なのでしょう。

 司令官の方がお疲れです。何より、艦娘に触れるのなんて嫌でしょう。誰が好き好んで、己をあっさりと殺せる者に触れたがりますか。

 

 怖いはずです。軍神とさえ言われていても、司令官は人間なのですから。

 …でも、姉さん達は触れ合ってもらった。だから私も。

「遠慮する必要はない。喜んで揉ませてもらうよ」

 返答は期待を遙かに超えて、とても柔らかな響きが乗っていました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。