「それなら改めて」
司令官が立ち上がろうとします。…距離が離れちゃう。貴方を近くで感じたい。
なんて。どこか呆けた言葉ですね。それでもと望む心を、今度も無視はしたくないから。
「いえ、えっと。座っててください」
「む?」
のんびりと座って待つ彼へ。精一杯の心を振り絞って、座る。
「よいしょっと」
座った瞬間、ほんの僅かな間だけ硬直したけれど。すぐに受け入れてくれた。
暖かい。がっしりとした体が、私の重みを受け入れてくれる。
すぐ後ろで息が聞こえる。体温を強く感じてる。ふふふ。幼子が父に甘えるような。不思議で、妙な光景かもしれないけどね。
とっても落ち着く姿勢。今日話したばかりなのに、もうすっかりと懐いてる。変だけど、悪い気分じゃない。
「…重くないですか?」
「軽い位だよ。気にする必要があるとは思えない」
強がりには聞こえなくて、一応は乙女として嬉しかったり。
ふふ。やっぱり今日は変な私です。いつもだったら、こんなに大胆な事はできないのにね。今日だけ。今日だけだから。
誰に言い訳をしているんでしょうか。自分の心にですかね。
「えへへ。ありがとうございます」
「それじゃあ肩を揉むぞ」「お願いします」
改まって、肩もみの時間が始まってくれます。
司令官の両手が肩に添えられて、力が加わってきます――ふわあ。と、とける…! じんわりと熱がひろがって、あ、あ~、これ、これやばいです!
何ですか! なんで司令官はこんなに癒やし上手なんですか! 錬磨された技術が、凝り固まった体をほぐしてく。
「あ、そこ、です。う~、あったかい。気持ち良い、です」
脳みその奥底がとろとろになりそう。ふわ~っと安らぎが広がって、と~っても気持ち良いです。ああ…寝ちゃいたい。委ねて眠ってしまいたい。
「うむ」
これだけの絶技を披露して尚、全然威張る感じもなく。
ただただ自然体。当たり前に覚えたのでしょう。
「司令官は、ほんとにがんばりやですねえ」
「そうか?」
きっとだけどね。司令官個人の技量を褒めても、素直に受け取ってくれません。
軍神としての功績だとかは、受け取ってもらえるのでしょうけど。今、私が伝えたいのはそんなんじゃなくて。
「私たち姉妹と、ちゃんと話してくれてます。嬉しいです。はい」
「俺も楽しいからな。だから、こうやって接しているんだ」
優しい言葉。体勢で見えませんが、絶対に微笑んでくれているだろうな。
暖かい。肩もみだけじゃなくて、言葉でも暖めてもらいました。
「良かったです」
「ん」