とても恥ずかしく。今までの私だったら、絶対に言えない言葉。
おねだりする。恥ずかしくてたまらないけど、弱さを貴方に見せます。受け止めて…なんて言えないけどね。
「…じゃあ、ぎゅってして」
「うむ」
応えてくれて、優しく包み込むように抱きしめてもらえる。
司令官の体温を感じる。息づかいがはっきりと聞こえる。背中に、力強く鼓動が伝わってる。ああ嘘みたい。頭が熱い。ぼ~っとしてきた。
こんなに力一杯褒められるなんて夢みたいで。段々と止まれなくなって。
「ほめて。いっぱい頑張ったから、今日の為に頑張ったから」
頑張ったよ。いっつも頑張ってるの。認めて、褒めて。褒めてよ。
いつだって怖いんだよ。戦うのは、生きてくのは怖いんだ。
どうして私は、艦娘なんだろう。船の記憶はある。あるけど、確かにここで生きてるのにね。
「クッキー、美味しかったぞ」
耳元から伝わる甘い言葉。くすぐったくて、でも逃げたくない愛しい言葉。
「気遣ってくれたのも嬉しかった。本当に優しい子だ」
見てくれてる。私を認めてくれてる。嬉しい。嬉しくて、たまらなくて。
胸が熱い。私の小さな体いっぱいに、嬉しいが広がってるみたいだ。
「提督の仕事も頑張ってくれたな」
それは司令官が頑張ってる姿を知ってたから。私も、って頑張れたんだ。
「皆を思って、仕事に取り組んでくれていたのを俺は見ていたぞ」
静寂に広がる褒め言葉。心に響く色を帯びて。ん。うん。ありがとう。
そう返そうと思ったら。
「小さくて可愛い」
「えっ!?」
全然予想してなかった言葉。可愛いって。わ、私艦娘なんだけど。
あ、ああ。そうだよね。うん。大っきなクマさんも強いけど、よく見れば愛らしい気もするし。そういう感じかな。はい。
抱擁が強くなった。逃げられない。…逃げるつもりもないけどね。
「手入れの行き届いた桃色の髪が、撫で心地が良い」
「ぁ、ぅ、その…が、頑張って手入れしてるから」
なんか違う! 嬉しいけどね! ぐらぐらと頭が沸騰してるみたい。
「ん。撫でて良いか?」
「…どうぞ」
司令官の掌が私の頭を撫でる。し、心臓が壊れそう――だけど、不思議と落ちつく。
ふふふ。とっても優しい手のひら。暖かいなあ。
「くりっとした瞳が綺麗だな。ずっと眺めていても飽きないぞ」
「司令官の目も綺麗だよ?」
夜の海みたいに落ち着いた眼差しは、宝石みたいで綺麗。
姉さん達と接してから、一段と目の輝きが強くなってる。格好良いと思います。はい。
「ありがとう」
さらりと受け流して。
「声が良い。愛らしく、切なくなる甘い声色だ」
またまた褒め言葉が続いてく。これが虚飾だったら分かるけど、全部本気で真っ直ぐな言葉。
「い、いっぱいあるんだね!」
「まだまだいっぱいあるぞ。そうだな」
「え、えっと! もう大丈夫! …はい」
これ以上聞いてると、羞恥で燃え尽きちゃいそうです。
「そうか」