とっても残酷な問いかけ。艦娘が、戦う者がしていい問いではない。
失望されただろうか。それでも私は目をそらさず。貴方の瞳をまっすぐに見る。
黒い目に強い光が宿るような。彼もまたまっすぐに私を見て。ただ淡々と。
「ならば俺が、俺達が強くしようじゃないか」
強くなれるって、駆逐艦たちが強くなれるって信じてくれるの?
…響とは違うんだ。そう言いたい。言ってもいいかな。今更、止まれないし止まりたくない。
「今弱いのだろう。戦場に呼ばれないのだろう」
その通り。脆くて死にやすい私たちは、優しい人たちが戦いを認めてくれない。
死にたいとは言わないよ。生きていたい。それでも、他ならぬ仲間に危険を押し付てまで、平穏にいたいとは思えない。
「だから、己が存在を認められないと言うのならば」
言葉は続く。どこまでも自然な声色と、どこか諦観をにじませた顔で。
「強くなれば良い。鍛えれば良い」
結びは単純な真理だった。うん。その通りだよね。一瞬で解決なんてできなくて、だから、私も尋ね続けるんだ。
「駆逐艦が強くなれるの?」
「響を見ろ。鍛え続ければ、戦い続ければ確実に強くなれる」
不死鳥の名にふさわしい歴戦の猛者。凄まじい密度の戦闘経験は、彼女の死を許さない。弾が勝手に逸れていくほどの能力と、危険に対する嗅覚が優れてる。
一度だけ演習を見たことがあるけど、隔絶した差を感じてた。
そうして、彼女とは違う。と言いたい私の心すら抱擁するような、とてもやさしい笑顔で言葉は続く。
「一歩ずつ前に進もう。そうすれば、必ず先へ行けるから」
「…でも時間は待ってくれないよ。運命はいつだって残酷なんだから」
ああ。これもまた残酷な言葉だ。嫌われてもおかしくはない。私自身が、自分を嫌いになりそうな位。
なのに貴方は、どこまでも強く曇りない眼で言う。
「――その時は俺が全力で抗うさ」
軍神の風格。思わず奮い立ってしまう程の雰囲気。
一軍の長として、神にまで至ったと言われてる人なのだ。凄まじい。
「頼りにしてくれたまえよ」
「…頼りになりすぎますね」
本当に。ここまでの優しい時間が、似合わないのではと思う強さ。
それが悲しいと思えるようになったから、きっと、今日の一日はとても大切な時間だったのだろう。
「これでも修羅場は潜ったつもりでね。抗う心は誰にも負けん」
「むう。私の悩みは、司令官への不信が原因だったのでしょうか」
そんなつもりはなかったのですが、結果としてそんな感じです。
「さてね。俺の語りで少しでも不安が晴れたなら、何よりだが」
「ふふ。ありがとうございます。はい」