残る一体も魚雷で仕留めて、初めての指揮は完勝に終わった。
『大勝利っぽい!!』
喜び跳ねる彼女を感じる。夕立の視界なので表情は見えないが、満面の笑みを浮かべているのは分かりやすく。
勝利の実感が彼女の自信を取り戻し、とても良い結果を生んでいた。
良いね。やっぱり笑顔が似合うぜ。ふふふ。飛び跳ねてる彼女の足下に寝転がって、夕立のパンツが見たい!! ――嘘だがね!!
生憎だが、俺は夕立のパンツは見たくない。いや、見たくないと言えば嘘になるけど。
こうして指揮を執って気付いた。夕立は無邪気な子、愛らしい艦娘。
ふふ。見守る意思が強くなってるぜ。俺がパンツを見たい駆逐艦は、響ただ一人!
『司令官』
冷たい瞳で俺を見つめる彼女の声が、聞こえた気がした。久しぶりに指揮を執っているから、響との感覚も思い出している。なんかエロいね。
「お疲れさまだ。負傷はないか?」
『掠りもしなかったぽい』
元気いっぱい。疲れも感じられない。まだまだ無駄は多いのだが、一度も被弾しなかった。素晴らしい成果だ。頭を撫でたい。
海にいるから仕方ない。もっと情熱的に褒めたい。ふっふっふ。
もう少し俺側からの力を強めれば、装甲を操作したりとかが出来るんだけどな。後は夕立の枷をもっと外して、単純に速度を上げたりも出来る。
ただ、夕立に負担がかかるし、俺側から変に求めてもいけない。
「ならば良し。良くやった」
この言葉で締めくくる通りだ。今日は良い感じ。彼女の成長と強さを知れた。
『にひひ。このまま巡回も終わらせて、花丸仕事っぽい』
「ん。気をつけてな」
『はあい』
のんびり調子で走行が再開される。始まったばかりとは違って、落ち着きと安定が増していた。良い傾向であった。
それにしてもだが。本当に楽勝だったな。
思っていたよりも遙かに、夕立の練度が上がっている。地道にコツコツ重ねているのは知っていたが、こうも違うものか。
これならば深海共の巣が出来ても、十全に立ち回れるだろう。
戦力が大分充実している。駆逐艦本来の強み。燃費の良さと回復の早さから、練度の向上が良いペースで進んでいるのだ。
真面目な子達なのも良い。この調子で――敵艦隊を感知。これは。ああ。そうだな。
一つ良い事が起きれば、揺り返しの如く困難が訪れる。嫌になるほど付き合い続けた。転生者としての、運命としか言いようのない展開。
物語の喜びなんぞを求めて、
「敵艦六体を感知、艦種は軽巡二、駆逐四」
『えっ…?』
絶望的な数の差が、勝利に浮かれる俺達へ与えられた。