理不尽な程の火力で応じ。尚も被弾し続けて、中破まで追い込まれて。
頬に煤汚れ。衣服はボロボロ。艦装に傷が見られる状態まで至ったのに。
彼女の笑みは消えず。不敵に獣の如く。牙見せながら笑う。そして、ラスト一体を殴り殺し。
此処に戦闘が終了した。瞬時に意識を切り替えて索敵…良し。増援の気配は感じられない。
平和な海域に現れたのは気になるが、一先ず危機は去ったと言っても良かろう。油断は欠片もしないが、帰還しても良い頃合いである。
それでも、無粋な戦況分析を伝える前に。――全身で喜びに打ち震える夕立の姿。
深い歓喜の心が胸底から滲み出て、噛みしめる様に目を瞑っている。熱く燃える戦場の熱とは真逆。じんわりと全身を伝わる。
ここにいても良いんだって。生きているんだって。
実感と安堵が存在を許す様子。この喜びだけは、繋がっている俺でも完全には分からない。
彼女だけが得られた戦果。正直妬けるね。ふふふ。羨ましいぜ。
まあでも、そんな夕立を見られる喜びを得られるのだって。俺だけの戦果。誰にも譲れねえさ。
緊張からの解放で、軽く息を吐く。どろっとした淀みが、奥底から出てきたけれど。言葉には絶対乗せず。
「…夕立、お疲れさまだ」
『提督さんもお疲れさまっぽい』
穏やかで落ち着いた喜びの返答。良いね。後は帰還するだけだ。帰るまでが戦場、無事に帰ってきてほしい。
「うむ。速やかに帰還してくれ。君の笑顔が早く見たい」
『全速力で帰りま~す!!』
びゅんと急加速して、彼女が帰還し始めた。繋がりを抑えて意識を逸らし。連絡も待機状態にして、意識を完全に執務室へと戻した。
「さてはて」
――瞬間、強烈な吐き気と凄まじい目眩が俺を襲った。
「げぼおっ、お、ぼふっ、あ、ぁ、ぅ」
我慢すら許さず嘔吐。前もって覚悟していたから、用意していたゴミ箱へ吐き出し切る。
「久しぶり過ぎて鈍っちまってたか。はっ。これで軍神とはな」
ああくそ情けねえ。不安と恐怖で手の震えが止まらない。戦闘から解放されて、心のダメージが出てきた。
本当に笑っちまうぜ。高々、一度の全力戦闘でコレか。無理出来る体なのは知っているが、イベント海域とか唐突に生えてきたら、疲労とストレスで死んじまうかもな。
…戦闘指揮が原因なのではない。指揮に対し、トラウマになっている俺が悪い。
でも、戦えた。久しぶりに戦えたんだ。良かった。また一つ、運命に対する力を取り戻せた。
「ふう」
何はともあれ勝利を迎えて、これから帰ってくる彼女の笑顔を楽しみに。少しだけ瞳を閉じた。