夕立の帰還から十数分。修復と補給を済ませてから、駆け足で来る彼女の気配を感じつつ。
「たっだいま~!!」
扉が勢い良く開いて、夕立が執務室へと戻ってきた。
「おかえり夕立「提督さん!」
そのまま勢いが止まらず。佇み待っていた俺へと抱きついてくる。
「えへへ。思いっきり甘えてるっぽい!」
うむ。これは……ノーブラだな!! ほにょんと柔らかい!! しかし、しかしなぜだ。
何故俺は興奮していない。なんだろう。いや確かに素晴らしい感触。許されるならば、頬ずりしたいとさえ思ってしまう。とても、とっても良い感じなのだが。
夕立の抱擁だと思うとなんだろう。邪な気持ちがマジで出てこない。
「ねっ、提督さん。その、褒めて」
父性がめじゃめるの~! …どうしたどうした。俺の心は壊れたのか。違うだろう。
でもマジ可愛いよね!! ふふふ。めっちゃ萌える。ああ。良い。良いぞお。
始めがアレだったから余計に嬉しい。ふっふっふ。堪らんぞ。
「よしよし」
彼女の金髪を撫で回すと、しっとり心地で気持ち良い。
「暖かい。優しい手。もっと、もっとほめて」
嬉しそうに目を細めるのを見れば、こちらまで自然と笑顔が浮かんだ。
「出会った頃より甘えん坊だな」
ぎこちなさが消えて素晴らしい。これぞ夕立。というか、イメージしてたのより強い甘えっぷり。
やばいぜ。俺が融けちまうぜ。メルトアウトしてしまうぜ。わけが分からん。
「駄目っぽい?」
それでも少しは残っている緊張の心。不安げに潤み始めた瞳を見て、一際強くわしゃわしゃと頭を撫でてから。
「嬉しいよ」
素直な気持ちを伝えてみた。
「ほんと?」
ぱあっと花開く笑みが嬉しい。もうほんと、可愛すぎませんかね。やばいやばい。達する達する!
とか言いつつも、全然興奮してこない。正直勃起しない。…俺も大人になったのだなあ。
「ほんとにほんとだ。ぽいじゃなく、確実にそうだとも」
「甘えて良いんだ。そっか。うん。とっても嬉しいな」
彼女の口癖を真似た俺と違い。今度は断言するように言った夕立。
静かに微笑むその姿も、どこか彼女らしくて。好ましい表情だ。
「提督さん、もっと甘えて良い?」
「遠慮する必要はないぞ。今日のMVPは夕立だ。報酬があるべきだろう」
「ふふ。ん~」
俺の胸に顔を埋めて、マーキングするみたいにすりすりしている。ぎゅっと抱きしめてみれば、応えるように彼女も抱き返してくる。
とても甘えられている。ソレが心地良くて、出会った頃の距離感が消えたのを実感した。
ああ~癒やされる。癒やされていくぜ。仄かに残っていた吐き気もなくなり。すっかりと、夕立に治してもらった。ふふふ。
こういうのが良いんだ。物騒な空気なんてほしくないってのに。
まあ良いや。今は、甘えてくれた夕立と語り合おうか。