のんびりと甘えられてから、約束通り焼き魚定食を用意した。
「このお魚、とっても美味しいっぽ~い!!」
夕立改二の凶暴な雰囲気も消えて、すっかり元の夕立姿。
何の為かは知らんが、此方の艦これ世界の改とかの在り方は特殊だ。
常時ではなく。必要に応じて出力を変えるイメージ。ぶっちゃけ超サイヤ人である。
同じ鎮守府に同艦が存在出来ないから? よく分かってない。
「ふっふ~、すっごい美味しいっぽい」
今度はみそ汁を飲んだり。おにぎり、みそ汁、焼き魚。定番だぜ。
彼女が、全身全霊で喜びを伝えてくれた。めっちゃ元気な彼女の声は、作りがいをこれでもかと与えてくれる。
良いねえ。たんとお食べなんて微笑みたくなるぜ。
「おにぎりも絶妙っぽい! 提督さんって料理が上手っぽい」
「夕立は作らないのか?」
自分で言っておいてなんだが、彼女に料理は似合わない。
美味しそうに食べてる姿がばっちりだ。いや、勝手なイメージだけどさ。
「経験がないっぽい。白露とかは上手っぽい」
「料理でも一番だと言いたがりそうだな」
人差し指を立てながら、高らかに宣言する白露が思い浮かぶ。ふふ。皆大好きな長女である。
「ふふっ。白露らしいっぽい。下の子達の笑顔が好きな、頑張り屋さんね」
「夕立はそうじゃないのか?」
「皆は好き。けど、夕立はそういうのが苦手っぽい」
率先して張り合う姿は見えない。戦いの時こそ獰猛だが、普段はただ明るい子らしい。
そうして、本当の意味での出撃も今までなかったから。どうにも。さてはて。
「ただ自然体で皆を愛しているのだな」
「難しいのは分からないっぽい」
「うむ」
彼女らしい言葉で何よりだった。
「ごちそうさまでした~」「お粗末様でした」
食べ終えて、のんびりと二人で茶を飲み始める。ソファーに隣在って座り。時間を共にしている。
暖かい。良い気持ちになっていた。
お茶菓子も用意してみたり。ぽりぽりと美味そうに金平糖を食べる姿は、やはり彼女らしく。出会ったばかりの時より、遙かに愛しい気持ちになっていた。
「提督さん、色々と聞きたいことがあるの」
「ふむ?」
ちょっと真面目な雰囲気だった。何かあったのだろうか?
「えっとね。ぐわ~っとして、わ~ってなったんだけど」
ああ。成程。俺の指揮が気になるらしい。
それはそうだろうな。自惚れでなければ、世界で唯一人使えるのが俺だ。戦神とか呼ばれてる勝の馬鹿は、数十人同時出撃とか、もっと頭の可笑しいレベルの力があるのだけど。
まあ、小技は俺の方が得意だったり。
「伝えたい気持ちは分かるのだが、とても抽象的な言葉だな」
「えへへ」
誤魔化すような笑み。ごっつぁんです!!
「然程面白い話ではない…出来なければ死ぬから、出来るようになっただけさ」
しかも死ぬのが俺じゃないときている。ふぁっきゅー。むしろ、ふぁっくみーであった。
ま、そんだけ鍛え抜いても、どれだけ訓練しても。死ぬ時は死ぬんだけどね! くそ。
「とってもすごいっぽい。どうして、普段から出撃しないの?」
「攻略すべき海域もないからな。かといって、普段から俺が指揮を執っていると」
今回は嘔吐程度で済んだが、一番ヤバかった時は半身麻痺とかだったからな。
もう少し言うのならば、何て言おう。そう。客観的に意識が飛ぶというか。視界は確かに俺なのに、天井から俺を見下ろしている感覚。全身が凄まじく鈍って、動きたいと思えない感覚。
不謹慎な例えかもしれないけど。鬱病、の最終形態みたいな。自殺する気力すらねえ。って感じ。
それも乗り越えちゃったから、俺は主人公だね! くたばれ!!
「柔軟な対応力のない艦娘が出来上がるかもしれない」
適当に言葉を濁しておいた。これも嘘ではない。
「まあ、枷を外し育てる力こそ本質なのだと。思ってはいるのだがね」