無論、客観的事実を言わせてもらうとするなら、俺の指揮は優れていよう。
というより、こんだけ経験値を重ねれば誰だってそうなる。仲間達との思い出だってある。鍛え抜いてきた。努力出来るも才能と呼ぶなら、俺だって天才だと吼えたくなる位。
自負はあるさ。だからこそ。
「素直な気持ちを言わせてもらえば、俺の指揮がない戦闘こそ価値があるのだと思う」
代用品のない兵隊なんざ二流。誰もが一定の水準を超えれば、特化型なんていらない。
英雄なんて要らない。俺もまた、軍神とかって呼ばれる化物だけど。
一応は天性の才能がない中で鍛え抜いたからこそ、強く実感している。
「提督がいなくても戦える。ソレが理想像だ」
個人への負担が重すぎるわけだ。ぶっちゃけ、とても歪な状態であろうよ。
この世界の人達は優しすぎる。それだけでも世界の悪意を感じる程、黒く染まりきってない灰色の世界だ。ああ嫌だね。
「その為にも練度を高めていく。訓練と休息、二つの要素で戦士になるのさ」
本当は日常だけを過ごしたい。そんな世界も知っているよ。
そんな俺が、戦争に諦めちまっている。平和を諦めちまっている。
なんて罪深い転生者。と、己を責めるには。この世界であった者達が好きすぎて。
生きてと願われたんだ。ふふ。いや…どうにも。どうして夕立と接していると、こうもシリアスになるのだろう。
力を求めて、価値を求めている姿が、かつての俺と重なったのかな? 分からんね。
「…駆逐艦は脆いっぽい」
純粋な事実。それがネック。逆に言えばだが、それさえ乗り越えちまえば良い。
そうなれたなら、駆逐艦は最強に等しい艦種とも言える。高燃費、回復の早さ、魚雷の破壊力。俺が知る今最も強い駆逐艦・不死鳥の最果てと語れる彼女の。
改二に至った、信頼すべき姿は美しい。見惚れる程、泣きたくなるほどにね。
なあんて。調子に乗りたいもんだがね。反則級の戦艦共も知っている身からすれば、なんとも言えない。
最前線で価値を磨き抜いているのが、戦艦と空母である。張り合おうとするのはいけない。
「だが、夕立が今日手にした勝利と同じく。価値ある一勝を得られる」
もう二度と、俯いて悲しむ者達を見たくないんだ。その為に無理が必要なら、俺はどこまでだって強く在れる。君達と共に。
「そうでなければ、駆逐艦の魂が腐ってしまう。俺は覆すためにいるんだ」
「頑張るよ」
強い決意と楽しげな微笑みが同居して、とても良い表情を浮かべている。
良いねえ。死なないの極限に近いのが響なら、勝利するの極限を目指すのが夕立。
どちらの在り方も俺は好きだ。支えられる自分でいたいもんだ。
「無理をしない範囲でな」「ぽい!」