味噌汁、玄米ごはん、大きめの鶏から揚げ。千切りキャベツとくし切りトマト。
めっちゃうまそう。普段食べてるおにぎりとかも良いけど、ちょっと次元が違う。
何て言おう。アレだ。幸せの味である。まだ食べてすらいないけどな。
デザートはない。甘味は好きだが、イメージと違うから用意されなかった? 残念。
響が選んだのは、海鮮シチューとコッペパンだった。
デザートにみかんゼリーが用意されている。飲み物は冷えた麦茶だ。
水差しにはまだまだ残っていて、麦茶のおかわりは自由らしい。
ボルシチではなかった。ハラショー。うむ。意味が分からん。
そうこうしていると、川内のも運ばれてくる。焼き魚定食だった。
彼女らしい。和風なイメージと良く合っている。
おろし醤油と焼き魚。多分鰆かな。大きめの切り身が美味そうだ。
定番の豆腐のみそ汁と白米ごはん。カットされたりんごがデザートである。
うさぎ形でたいへん可愛らしい。二人だけずるくないか。俺も可愛いデザートがほしかった。
「「「いただきます」」」
思わぬタイミングで声が合わさった。俺も含めて、表面上は誰も気にしてない。
ちょっと恥ずかしかったというか、川内に何コイツと思われていないかどうか。
不安である。
いやいや。彼女はそんな事を思わないだろう。落ち着け。今は料理を楽しもう。
と、言った所で。
「ほら司令官。あ~ん」
響がシチューを一口分掬い、俺の眼前に与えてきた。――完全に忘れてた!
ちらりと川内の方を見た。…驚愕に彼女が目を見開いている。
どこかその様子が夜戦バカっぽくて、ちょっとだけ満足していたり。
いや、この程度じゃ足りない。もっと俺を満足させてみろよ!
現実逃避をしていても、目の前の光景は変わらない。仄かに響の怒りを感じる。急かすような感じ。このまま迷っていたなら、本気で怒りそうだった。
怖い。戦艦の群れより遙かに怖い。
良いさ。俺も立派な大和男児だとも。こ、ここで、逃げたりなんかしない!!
ぜったいに、響のあ~んになんて負けたりしない!
「あーん」食べてみると。
これ幸せの味~!! や、ヤバい。ちょうヤバい。
語彙力が足りない。誰か助けて。俺を、俺を殺してくれ…えっ? なぜに俺は死にたくなって。ああ。そうか。此処がヴァルハラだったんだ。
響には勝てなかったよ…だって川内めっちゃ見てるし。やっぱりこの光景は不味かったんだ。俺はやらかしたんだ。
幾星霜の月日を超えて、俺は戦い続けてきた。ようやく掴んだ平穏。
どうやら俺は、平穏に適応出来なかったようだ。
次の俺は、きっと越えてくれる。――託した、ぞ。
などとふざけてみたが、そんなアレはない。生憎だが死んだことは一度しかない。