「提督!」
溢れ出る熱気が血液を巡ってる。戦いたい。蹴散らしたい。
全員逃がさないから。もうしらないっぽい。全部、全部解放するっぽい。頭が熱い。視界が真っ赤になってる。匂い。感じる。戦場の香りが心地良い。
死と隣り合わせのスリルが脳髄を満たす。本能が、戦果を求めて荒れ狂ってる。
戦いたい。ああそうだ。夕立はどうしようもない程、艦娘なんだって。
『楽しもうか!!』「ぽい!!」
それでも指揮を執ってくれる提督さんがいるから、誇らしく進めるっぽい。
格段に常勝した出力で敵艦隊と接近。それでも、相手の練度も高いっぽい。
すぐに砲撃が開始された。先手はあっち。
「見える……けど!!」
避けられない。出力は上がってるのに、避けられるラインが見えない。
受けるしかないの? …駄目。今の夕立の装甲は脆い。砲塔に強烈な力は感じるけど、その分、装甲が脆くなってるっぽい。――なら道連れにしてあげる。
どくんどくんって心臓がうるさい。熱い。殺せって、壊せって魂が叫んでる。
自分の安全なんて必要ない。燃え尽きたって構わないっぽい。ただ全員、あは、あはは!!
さあ、当ててみせてよ。全員壊してあげる。
『安心しろ』
提督さんの力強い声。怖くて仕方ないのに、経験と技量で超えると誓った人の声。
…落ち着こう。身を委ねて、貴方を信じてるからね。夕立の力もみせたいんだ。
『俺が支えてみせる!!』
「力が動くっぽい!?」
身に纏う装甲が、命中する部位に集中してる。こんな事ができるの?
「きゃっ!」
衝撃は響いたけど、全然痛くない。これなら夕立は止まらない。
「でも、まだ戦えるっぽい!!」
相手の反撃は許さない。一方的に撃ってきたでしょう。それなら。
「今度はこっちの番!!」
滑らかに砲撃。大きな反動が伝わるほどの砲弾は、あっさりと敵軽巡を一体沈めた。
敵の動揺が伝わってる。迷いを感じるの。ふふ。止まってて良いの? 私はまだ動けるっぽい。
「まだ手番は終わってないっぽい!」
匂い。心の奥底で狙いを定めての魚雷発射。照準を合わせる必要すらない。研ぎ澄まされた本能と、纏う提督さんの経験が結果を確定させる。
回避を許さない雷撃が、もう一体を沈めた。残りは四体。
『二体撃破。良くやった』
本当に嬉しそうな声。安心も仄かに感じられた。まだまだ、もっと出来るって言いたいけど。
「頑張ったっぽい!」
褒めてほしくて言っちゃった。ふふ。褒めて褒めて。嬉しい。ぎゅっとしてほしいっぽい。
『さあ、俺を信じてくれ。俺も君を信じている!』
「任せて。素敵なパーティーにしましょ!」