「ならやっぱり、五月雨のドジはただの欠陥ですね」
強がって笑う彼女は、今にも泣き出しそうだった。どれだけ悩んで生きてきたことだろう。ここは戦場だ。夕立とは違う意味で、五月雨も無力さに悩んでいる。どうにかしたいと想う俺は傲慢で、それでも素直な心だった。
とはいえ嘘は通用しないだろう。下手な慰めなんて意味もない。
いつも通りだ。戦争が待っていようとも俺は変わらず。いつも通り本音で言葉を紡ぎたい。
「それもまた違う」
「えっと…?」
別に励ますための嘘ではない。下の話はしないが、真面目な意味で彼女のドジは欠点ではないと思っている。
五月雨の笑顔を見せてもらった。そうして、他の姉妹達の語りで健気さと明るさを知っているんだ。
作者なんて下らない思考をする俺が、君の在り方がどれだけ羨ましいことか。
「運命に抗う努力する心。そうして、失敗を知っているからこそ優しく在れる」
それは自信の欠如に繋がるのかもしれない。巌の如き強さは得られないのかもしれない。
だが、それがどうしたと言うのだ。完璧な人間なんていない。
油断なく努力し続けた俺でさえ、絶対に完璧ではない。…というか割と変態である。めっちゃスケベである。五月雨のパンツを刻み込んでいる!
『…すけべ』って言われてえなあ!! おっと。落ち着け。
そもそも愛らしい女の子のドジなんて、どう考えても萌えでしかない。戦時中に不謹慎だって? それなら俺の存在の方が余程不謹慎である。
重たい状況で、しかめ面していりゃあ偉いのかよ。俺は笑顔の方が好きだ。ドジで、場を和ませてくれる五月雨が好きだ。
なんて。ここに在る彼女を語りきるには、過ごした時間の長さも密度も足りないさ。だからこそ、今ここで味わった五月雨への素直な言葉を伝えよう。
「抗う克己心と無類の明るさ。二つをまとめる心の優しさは五月雨の長所だ」
いつだって明るく笑ってくれる五月雨に、他の姉妹だって救われている。
強くなるための、変わる為の努力をするなと言いたいわけじゃない。上昇志向は大切だ。強くなりたいと願う分には止めはしない。
ただ泣かないでほしい。涙を流して自責するのは、あんまりだろうと言いたいだけだ。
「君が転んだ数だけ強くなっている」
とても陳腐な言葉だ。もう少し格好良い言葉を紡ぎたいもんだがね。これが俺だ。どうしようもなく俺だった。
「ありふれた言葉だけど、意外と強さをくれるものだよ」
泣きたくなる位にな! はっはっは!! …うん。
よし。巣が出来たけど頑張ろう。同じく運命に悩む彼女が。
「はい!」
とびっきりの笑顔で応えてくれたんだ。ここで頑張れなくてなにが軍神だ。
「それなら今日は目一杯、提督を支えますね!」
「よろしく頼む」
明るく持ち直した素直な五月雨と共に、再び今日の仕事が始まっていった。