いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

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戦場前の緊張です

 あれから奮起してくれた五月雨のおかげで、ドジを重ねつつも良い勢いで仕事が片付いた。久しぶり、というと少々語弊があるのだがね。真剣に仕事だけを処理していたのは、久方ぶりだった。

 今は昼食時。お昼休憩の時間である。

 

 愛らしい一口サイズのおにぎりと、暖かな大根のみそ汁。卵焼きなんかもついていて、デザートとしてレモン水を塗った兎カットのリンゴがあった。

 微笑ましい昼食である。五月雨の手料理だ。彼女のドジも考えて、執務室に隣接している自室で、二人で料理を楽しんだ。

 

 砂糖と塩を間違えず。焦がしたりもなく。

「提督といっしょに作っていれば、おいしいごはんの出来上がりです!」

「ふっ。ドジを抜けば、五月雨の手際も良かったぞ」

 

「えへへ。ありがとうございます!」

 自画自賛であるが、俺に匹敵するレベルで料理が上手かった。

 普段ドジを重ねているからこそ、純粋な技術が鍛えられたのだろう。注意深く、相手を想って歩む道こそ上達には最善なのだ。

 

 まあ、それはそれとして。何度かミスをしそうになっていたのだがね。しょうがないね。それも愛らしさである。涙目五月雨ぺろぺろ。

「「いただきます」」

 二人でのんびりと食事を進めながら、これからの予定を話していく。

 

「巣はどうするのですか?」

 目下の問題は、鎮守府近海に出来た巣である。おそらく空母はいなく、戦艦がいても数体程度とのこと。

 

 巣の広がりは鈍いのがありがたい。特殊な核が原因の発生ではなく、自然発生し、尚且つ強力なボスがいない証拠だ。

 大きく分けて解決方法は二つ。自力で殲滅するか素直に応援願いを出すか。

「応援を頼もうかと思っている」

 

 これも良い方法とは言えない。最良は、自力で殲滅する力を持っておく事だった。対空戦力がなあ、どうにも足りないんだ。

 軽巡、特に神通とかともう少し指揮練度を高めておければ、自信をもって戦えたけどな。言ってもしょうがない。

 

 俺の精神はポンコツで、慣らす時間もなかったのだ。夕立との戦闘指揮は、巣が出来たと知る前だったし。何よりほぼ確実に勝てると思い、女神を持たせつつ、尚且つ危険な状況になる前で撤退出来る位置だった。

 

 巣の攻略は違う。撤退可能かも分からず、響を疑うわけじゃないけど、相手の戦力なんて完全には読めないんだ。

 空母がいたら此方が殲滅される。蹂躙されて、何人かは沈むだろう。

 

 そうして仲間達が沈む姿を、冷淡に切り捨てられる響ではない。動揺し庇おうとして、彼女も沈んでしまうかもしれない。…吐きそうだ。

 だから、今の鎮守府の戦力でやるなら響単騎だ。

 それでもどうなるか分からないから、戦場は怖いんだけどな。

 

 与えられたカードを嘆いた所で、何も始まらない。

 それで出来る事を模索し続けるしかねえ。楽しむ余裕があれば良いのだがね。どうにも最近は笑えていない。

「…天龍さんが荒れるかもしれません」


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