「――提督は私達が大好きなんですね」
「え?」
思わず呆ける程の明るい笑顔。日向の如き柔らかな笑み。なんて暖かい。
本当に嬉しそうな表情だった。照れながら、それでいて誇らしげに言ってくれていた。思わず自分の頬を人差し指で掻く。
あまりにも都合が良すぎて、夢かと思った。
これならば、なじられた方が楽だったかもしれない。最低の考えだがね。素直な本音でもある。返答が出来ず。黙りこくった俺へと彼女は続ける。
「成長の機会を奪いたくなくて、もしかしたら私達が傷つくかもしれないとまで思ってるのに」
誇らしげで愛おしそうに語っている。小さな胸を張って、堂々と俺を語ってくれている。
「それでも、厳しい言葉を投げかける。真っ直ぐに、嫌われたって構わないって」
ああ眩しい。真っ直ぐに見つめる瞳から、目をそらせない。
「それは自分の評価なんかより。私達の行く末が気になるから、幸せになってほしいから」
「それは」
否定の言葉を出そうとしたけど、微笑みながら五月雨は言う。
「…お父さんみたい。なんて。甘えすぎでしょうか」
あ、ヤバい。泣きそう。普通に泣きそう。ちょっと最近真面目すぎじゃないか? 勘弁してくれ。父と慕ってくれるのは滅茶苦茶嬉しいし、許されるなら抱きしめて頭を撫でたい位だけど。
やっぱり俺は臆病者だ。戦争を考えている。勝利を追求して、この子の信頼に応えることで、人としての弱さになるのではと思ってしまう。
娘を、我が子に死ねと言う父が何処にいる。戦場に向かえと命ずる父が何処にいる。
時雨の甘えは許した。語った言葉に嘘はない。父として見られるのならば、本当にありがたいと思っているけど。
俺は提督だ。どうしようもなく提督だ。ただまあ、沈み込むのも俺らしくない。
沈み、軍神であれば良いと拗ねる俺なんて、格好悪すぎるだろう。素直な心に従っていたいんだ。…どうにもいかんな。巣が出来て心が揺さぶられている。まったく。もっとバカを言おう。
「お父さんと呼んでくれて構わないぞ?」
出来れば甘い声で! お父さんって呼んでくれると最高だね!
「お、お父さん…?」
ぎこちなくも嬉しそうな顔だった。良いね。グッドだね。
「どうした?」
堂々と言葉を返すと。
「…お父さん!」
抱きつきながら大きな声で言ってくれた。
「お、おう」
細く小さな体を抱きしめ返す。緊張しながらも抱きついてくれたのは、提督への信頼感もあるのだろう。五月雨の底抜けな明るさも関係している。
ああ。だけど。おままごとみたいな感じでも。
「えへへ」
何この子可愛すぎない? 大丈夫? 良いのか、俺修羅になっちゃうよ。本気で巣を撲滅しちゃうよ。いや元々そのつもりだったけど。
とりあえず勝に応援願いだな。アイツ本人が応援に来るのは無理だろうが、空母系の一人は来てもらえる筈だ。出来れば龍驤が良い。久しぶりに会いたい。
無論、他空母もありがたいがね。加賀とか赤城、蒼龍に飛龍。誰が来てもありがたい。皆改二に到達している規格外の猛者達だ。おっぱいも含めて考えれば、本当は正規空母の方が良いのかもしれない。
だけど、俺にとっての最良は龍驤なんだよなあ。
『あはは! きばっていこうや!!』なんて快活に笑う彼女を覚えている。