いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

225 / 322
出撃命令です

 この鎮守府にいる軽巡の全員を、動員出来るかと言われれば不可能と答えよう。今回の敵の面子では、潜水艦も編成出来ない。

 神通、那珂、川内、龍田、天龍。その内、天龍が出撃しているのだ。

 鎮守府を守る者はいる。緊急事態とは言え、全てを注ぐ事は出来ない。

 

 最悪、別働隊が来る可能性もある。練度の高い神通と、同じく川内型の那珂は置いておきたい。

 故に出撃メンバーは四名。龍田、川内、夕立、時雨。

 

 合流した時の負傷次第で、流れを変える。最悪の場合は響と共に無理をして殲滅してみせよう。響が落ちていたら? ――やってやるさ。

 覚悟は決まった。全体放送でメンバーを呼び出した。

 そうして、執務室に集めた四名を改めてみる。

 

「つく頃には夜戦っしょ? 夜戦なら川内にお任せってね!」

「ああ。期待している」

 川内は格好の良い楽しそうな笑みで、俺の不安を融かしてくれている。

 彼女は緊急事態でも変わらない。仲間の命が軽いわけじゃない。ただ、動揺する弱さの怖さを知っているんだ。

 

 この鎮守府では、響に次いで俺との付き合いが深い相手だ。彼女に期待すると同時に、俺もまた川内も守り切りたい。

「命に代えても守り切ってみせます」

「安心しろ。俺が死なせない。頼りになる仲間達もいるだろう」

 

 龍田は張り詰めた表情で、不安に揺れる声と共に気合いを入れていた。柔和でどこか闇の孕んだ妖艶さはなく。

 ただ姉妹を心底から心配し、そんな姉妹を心配してくれる者も守りたいと願っている。

 

「夕立が全部壊してあげる!」

「暴れすぎて倒れてくれるなよ」

 いつも通りの楽しんだ笑顔で、夕立は在ってくれる。

 天龍達が心配なのは揺れる眼から悟れた。川内ほどの静寂な心はない。それを超える程の心で、彼女はいつも通りを見せてくれていた。

 

「提督、大丈夫だよ」 

「ありがとう。信頼しているぞ」

 口数少なく。儚くとも力強い佇まいで時雨は微笑む。佐世保の時雨の名を背負い、強くなると誓った彼女の魂が、俺の心も奮い立たせてくれた。

 

「緊急性の高い状況が故に、今回は俺が全力で指揮を執る」

 全員の表情が緊張を増した。川内と夕立だけは、楽しさも深みを増している。信頼が重たいぜ。応えたいもんだ。

「旗艦は川内。負担はかかるがいけるな?」

 

「もちろん! いけるか? なあんて聞いてたら怒ってたね!」

「良し。艦装の準備は既に済ませてあるな」

 問いかけに全員が頷いた。準備は十二分。さて、後はどれだけの地獄が待っているからだ。

 

 最悪の場合、響以外が轟沈している可能性もある。天龍が沈み、残された電達も沈んでいる。そうして響が中破以上の負傷で、容易に状況を覆せない。

 …俺の悪い癖だな。最悪は、全員が轟沈している状態だ。

 

 そんな想定すらしておこう。動揺は見せられない。本当に響が沈んでいたのならば、彼女の仇を取らないとならないんだ。

 一度、深く息を吸いこんだ。腹から声を出しながら告げる。

「大切な仲間達に手を出した愚か者共を、蹂躙しにいくぞ!!」

「「「「はい!!」」」」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。