赤面して待つ川内。堪らぬ高揚を感じつつも。
そっと彼女の髪に手を乗せた。
「ん」川内の吐息が漏れる。俺の心臓も漏れ出そうである。
ヤバい。響の手触りもすごかったけど。本当にすごい。
そっと触れた手から伝わる感触。上質な絹すら越えた滑らかさ。先程の響の髪質が、受け入れる透明さと例えるならば、川内の髪質は。
芸術品。髪は女の命とはよく言ったものだな。
艶手触りはおそろしく滑らかで、ひっかかりは皆無。
我慢出来ず。手櫛のように手を動かす。
う、うわ。すげえ。背筋にぞくぞくと流れる快楽。
掌が悦んでいる。ただ撫でているだけなのに、しっとりと馴染む錯覚。
仄かに香る汗の匂い。臭くない。なんだろう。何年間も、戦争で汚れる女の子の匂いを知っている。失礼な話だけど。体臭に幻想は抱いてない。
それでも、川内の汗の香りは良い。どくどくと心臓の動きが激しくなる。
響が女の子なら、川内は…女。女の匂いがする。このまま抱けたら。待て待て。
や、やべえ。撫でる手に伝わる快楽が、思考をどろどろに融かしているぞ。
およそ、髪の中で最上位ではなかろうか。
綺麗だとは思っていたけど、ここまでのレベルか。すっごい。
いかんいかん。我慢強い方だと思っていたけど、抱きしめてしまいそうだ。
俺は、川内には発情しない。とは何だったんだろう。死亡フラグだったかもしれない。
これ以上は危険だ。いやしかし。撫でるのを止める? ――嫌だ。
ふ、ふふふ。川内が拒絶するようにすれば良いのだ!!
愚問だが、俺からは止めたくないからな!
手櫛を止めて、そのまま掌で頬を撫でる。しっとりとした肌の手ざわり。
子供みたいにすべすべ。そうして、彼女の表情豊かさを示すように、とても柔らかな感触だ。
ぴくんと、くすぐったそうな反応。川内の両目が下を向いて、照れを押し殺している。可愛い。すっごく可愛らしい。
あ、あれ? 止めないの? お、怒れないよな。そうだよな。俺怖いし。
仄かに伝わる熱。羞恥の赤色。微妙にだけど緩んだ笑顔。嬉しそうな反応。
ふ~!! これだよコレ!! なでなでとはコレだよ!!
調子に乗ってすりすりしていると――唇に指先が触れた。
ぷるんとした柔らかさ。肌よりも柔らかく。乙女の大切な所。
彼女が涙目で、俺を見上げている。睨むと言うには熱があって、潤んだ二つの瞳は、俺に羞恥と……情欲を伝えていないだろうか。
いつ止めれば良いの!? これが川内の力か。
響がじ~っと見ている。はっと、我に返った。
『良いの? その先は大切な事だよ』
響の眼が語っている。怒りはない。ただただ問いかけている。
これは不味い。なんだろう。一時の性欲に駆られて、傷つけるのは嫌だ。
そうじゃないのだ。萌えは求めても、これ以上のアレは駄目だ。
川内、という艦娘への接し方ではない。愛を伝え合える者同士として、真摯に接する所だろう。などと考えつつ、最高の感触でした。ありがとう川内。
掌を頭に戻す。不思議なもので、性を意識しないで撫でていると。
萌えであり安堵であり安らぎであった。
父性。とはこれなのだろう。成程。そういう付き合い方もあるのか。
これもまた萌えの一種である。我此処に開眼せり。これぞ父性愛である。
ふう。川内の髪質すげええ。ヤバいね。ヤバい。ついでに言えば状況もヤバい。
響は安堵したように笑っても、じっと見ているし。川内はあわあわとなっている。
空気が止まっている。どうすれば良い。誰か教えてくれ。