響との抱擁が終り。彼女は無言のままに去って行った。顔が真っ赤だったのは気のせいではあるまい。
一人残されて、執務室にて呆けている。
まだ温もりが残っている。柔らかさを覚えている。
「…俺は何をしているんだろうな」
分からない。ただそれで良いと思えた。今日は厳しい一日だった。こんな真剣な感じも、偶には良いのではなかろうか。
毎日だと体が保てないけどな!
そうやってぼーっとしていると、今度は少し強めなノックが聞こえた。
「失礼するぜ」
「天龍か」
彼女らしく。どこか元気に入室してきたかと思えば。
「――勝手な遠征をしてしまい、申し訳ございませんでした!」
一切の迷いなく深々と頭を下げた。天龍に責任があったのは否定しないけどな。俺もまた立ち上がり。頭を下げる彼女へと、同じ位に頭を下げた。
「いや詳しく指定しなかった俺の責でもある」
「あ、頭上げてくれよ!」
そう言いつつも彼女の方は上げていない。気配で察したか。律儀なヤツ、というか割と礼儀正しい子である。
「それは天龍が頭を上げてからだ」
言ってみると、苦笑しながら上げてくれた。俺もまた同じタイミングで頭を上げる。天龍の仄かな涙目。痛みではあるまい。
「生きる意味は見いだせたか?」
からかうように問いかけると、頬を指でかきながら言う。
「…泣かれちまったらなあ」
そういう天龍も泣いたらしい。愛情を感じられたらしい。良いね。初めて対話した時よりも遙かに、自尊心と誇りが見られる。
誇りがある戦士は本当に強い。己の役割の侭に戦える。
終われば良い結末であった。そう思っておこう。
「オレはやっぱり愛されてるんだな」
愛されし者。彼女の危機に、暁達はどれ程頑張ったのだろう。
見えないのがもったいない。だけど、それは彼女達だけの宝物なのだ。それでいい。それがいい。
「自覚出来たなら良い。今日は疲れただろう。詳細は明日にでも書類で上げてくれ」
「そいつはありがてえんだが」
天龍の頬へ仄かに朱が差した。なんだ。どうしたのだ。
「なあ提督」
「どうした?」
彼女らしくない歯切れの悪い言葉だ。余程、言いづらい事を言おうとしているのだろう。しかし、どうにも重たい雰囲気はない。
なんだなんだ。悪戯でもしたのか。いやないだろう。
これからの天龍ならばあるかもしれないが、ここまでの天龍ではないだろうさ。だから俺もマジでやったのだ。
「ほら!」
どんと豊満な胸を突き出すようなポーズになった。…あの、えっと。俺も男なのですが。すけべなのですが。
良いの? 食べて良いの? 揉みしだいていいのですか!!
落ち着け!! ここまでの重たい感じで分かっただろう。もう戦場なのだ。しょうがないのだ。そうじゃないのだ。
これは…あれさね。何かあるのさね。思わず口調が崩れてしまう。
「何だ?」
「揉むんだろ」
言語が耳から脳へ届かない。意味が分からなさすぎた。
「何を?」
「――胸だよ胸!」
「は? えっ、いや何が?」
思わず素になって言葉が出てしまった。
「響から聞いたんだけどよ。提督は胸が好きなんだろ?」
いや好きですけど。というか何の話をしているんだ。
えっ? というか割と真面目に抱擁したんだけど。響は俺とどうなりたいんだ。俺をどうしたいんだ。
いやマジで。マジでさ。俺がすけべなの、響知っている?
分からないけども。あ~! わけがわからん!!
「でよ。なんて言うか、オレは提督に全部晒したわけだ」
そうだねプロテインだね。むしろステロイドかもね!
状況を整理し「とりあえず揉め!」