「は~笑った! 本当に久しぶりに笑ったぜ。生まれて初めてかもしれないな」
すっかりと邪気が消えている。天真爛漫で、格好の良い笑顔を浮かべていた。まったく。本当に可愛いヤツ。
「…そいつは良かったな」
それはそれとして、俺は恥をかいただけだがな!
「拗ねるな拗ねるな」「ふん」
からからとからかうような微笑みであった。
「あ~そのだな。提督」
「ん?」
天龍が自然に俺の右手首を掴んで。
「ほい」
豊満な彼女のおっぱいへと乗せた。
――それはおっぱいと言うには、あまりにも豊満すぎた。
柔らかく、暖かく、汗の感じもあり、そうして重たかった。
それは正に巨乳だった。
うっひょ~!! た、谷間に俺の手がさしこまれている!!
ど、どうした。何があった!? 衛生兵! 衛生兵!! ティッシュを用意しろ!! 油断すればすぐにいっちまうぞ!!
「んなっ!? お、お前…!」
「離すなよ。好きなんだろ?」
からかいを乗せた言葉は仄かに震えていた。どうしろと。なにか。ナニなのか。でも駄目だ。揉めないよ…。
もう脳みそがパンクしそうだった。
「…なんて事はねえ。オレも提督も生きてるんだ」
天龍の鼓動が掌から伝わる。手首を持っている彼女には、俺の脈動が伝わっているのだろう。めっちゃおっぱい柔らかい。
すごいやわらかい。良いのか俺はこんなに幸せで良いのか。
「精一杯生きてるんだ」
生きてるってかイキてるというか。やばい。まじやばい。
あばば。脳内麻薬がどばどばしてる。これもう良いよね。ゴールしても良いよね。飛行機雲である。
「きひひ。それが胸への熱い情熱で分かるとは思わなかったけどよ」
楽しそうだった。少しだけ理性を取り戻せた。情事の気配はない。でもちょっと酷いと思います。デリカシーが皆無だと思います。
「まだ強くなりたいか?」
「…強く在りたい」
似て非なる言葉。力を追い求めて生きるんじゃない。生きているから、力を求めている者の言葉だ。
「恥知らずになりたいわけじゃねえ」
弱さを認めながら。
「ただオレで在るというだけで、真っ直ぐに胸を張って」
愛されるを認めながら。
「堂々とこの世界に生きていたい」
良い言葉だ。多分、本当に良い言葉だ。良い言葉はなくならない。なんて。冗談を考えながらも。
「天龍は世界水準超えだからな」
「胸がか?」
間髪入れずのからかいであった。
「お前ね」
「はっはっは! …うん」
窺う様に俺を見つめながら、彼女は震える声で言う。
「揉まねえの?」
なんだよもう。だめか。童貞がおっぱいに震えたら駄目なのか。
良いぜ。ならば応えよう。俺を誰だと思っていやがる!!
谷間へさしこまれた手に力を込めた――っ!?
「んっ! へへ、優しい手つきだな」
や、やめろめろめろ。喘ぎ声っぽいのを出すんじゃない! ソロモンの悪夢ならぬ。ソウロウの悪夢になってしまう!!
…すげえ。これがおっぱいか。
思っていたよりは固い。ハリがあって、水風船みたいな感じだった。体温が良い。興奮より安心を覚えた。落ち着く感触である。
止め時が分からんので、なけなしの理性を振り絞り手を抜く。手で抜くんじゃない。勘違いはイケ…いけない。
「あ~うん。もう休みなさい。疲れたろう?」
「おう。とりあえず飯食って休まないとな!」
エロスな雰囲気も欠片も感じさせず。
「これからもよろしく頼むぜ」「ああ」
とびっきり天龍らしい豪快な笑みを見せてから、彼女は執務室から出て行った。