いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

236 / 322
複雑な心境です

 巣の殲滅を無事に終えて、静かな海が戻ってきた。特段、何も異常はなく。当たり前のように終了していった。

 三人が海から帰還する。天龍は補給を済ませて、訓練へと向かっている。

 大したモチベーションだ。良い傾向である。

 

 ぼんやりと、執務室のソファーに座って待っていると、残りの二人は戻ってきた。

「たっだいま~!」「司令官、帰還したよ」

 執務室に入ってくる二人の距離は近い。

 

 見慣れているけど、ここ最近は見ていない二人の揃った姿。かなり息の合った雰囲気を感じる。

 なんだかんだと、響と龍驤の付き合いもかなり長いのだ。

 

 阿武隈と響の次に、龍驤と響の付き合いが長いからな。激戦区で数年以上の付き合いである。凄まじい濃度の仲だ。

「疲れはないか?」

「あの程度は物の数にもならんね」

 

 これが強がりではないことは、他ならない俺が理解している。敵に空母がいなかったのもある。

 今回の攻略は一方的な蹂躙であった。いつでもこうありたいものだがね。

「龍驤さんがいてくれたから、随分と楽が出来たのさ」

 

「嬉しいこと言ってくれるやん。うりうり~」

 龍驤が響を抱きしめながら、撫で回している――僕のだぞ!!

 おっと。内なるグールが目を覚ましてしまった。落ち着こう。…百合も良いよね! 百合百合だね!!

 

「…さすがにこれは恥ずかしいな」

 響可愛い!! 響可愛い!! は~良い匂いするんだろうなあ。俺も抱きしめてえなあ。むしろ抱きしめられたいまである。

『甘えん坊だね?』

 

 って微笑まれたいぜ。

「照れるな照れるな。可愛いやんな。アメちゃん食べる?」

 どこからともなく飴をだしてくる。こいつは大阪のおばちゃんか。虎柄が似合いすぎるが、たしか出身は大阪じゃないだろう。

 

「いただくよ。ありがとう」

 ころころと美味しそうにあめ玉をなめ始めた。そうしていると、年相応の少女、間違えた。

 年相応の美少女に見えるから不思議だった。

 

「遠慮せんと好きに食べるんやで」

 からからと楽しそうに笑う龍驤へ微笑みつつも。

「ん。それじゃあ失礼する」

 穏やかに響が退出していった。

 

「ゆっくり休むんやで!」

「三人で話せば良いだろうに、何を気遣っているんだ」

 せっかく三人で話せる機会なのに、なんでわざわざ出ていくのだ。もったいない。俺と龍驤に気を遣いすぎだ。

 

「まだまだ乙女の扱いが分かってないなあ」

 意地悪な笑みで、俺の隣へと座ってきた。そのままのんびりと、だけど真面目な声で言葉を紡ぐ。

「創を独り占めにしてる罪悪感。うちにしか見せない一面を、見ざるを得ない状況」

 

 静かに語る言葉は、龍驤の本音でもあるのだろう。独り占めね。俺が響を独り占めしているわけでもあるんだが。

「響としては複雑やろ」

「む、う?」

 

 そういった点も含めて、響も思う所があるのかもしれない。…それでも抱きしめさせてくれた。さて。

「にっひっひ。前までならそんな嫉妬も感じさせなかったのになあ」

 それはそうだ。彼女は自分の心を隠すのが上手い。

 

 最前線時代も色々とあった。大切な思い出だ。

「時間が経つのはホンマに早いわ~」

 俺と響の出来事に深くは踏み込まず。全部を抱擁する大きさで龍驤は笑っている。昔からそうだ。彼女には敵わない。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。