巣の殲滅を無事に終えて、静かな海が戻ってきた。特段、何も異常はなく。当たり前のように終了していった。
三人が海から帰還する。天龍は補給を済ませて、訓練へと向かっている。
大したモチベーションだ。良い傾向である。
ぼんやりと、執務室のソファーに座って待っていると、残りの二人は戻ってきた。
「たっだいま~!」「司令官、帰還したよ」
執務室に入ってくる二人の距離は近い。
見慣れているけど、ここ最近は見ていない二人の揃った姿。かなり息の合った雰囲気を感じる。
なんだかんだと、響と龍驤の付き合いもかなり長いのだ。
阿武隈と響の次に、龍驤と響の付き合いが長いからな。激戦区で数年以上の付き合いである。凄まじい濃度の仲だ。
「疲れはないか?」
「あの程度は物の数にもならんね」
これが強がりではないことは、他ならない俺が理解している。敵に空母がいなかったのもある。
今回の攻略は一方的な蹂躙であった。いつでもこうありたいものだがね。
「龍驤さんがいてくれたから、随分と楽が出来たのさ」
「嬉しいこと言ってくれるやん。うりうり~」
龍驤が響を抱きしめながら、撫で回している――僕のだぞ!!
おっと。内なるグールが目を覚ましてしまった。落ち着こう。…百合も良いよね! 百合百合だね!!
「…さすがにこれは恥ずかしいな」
響可愛い!! 響可愛い!! は~良い匂いするんだろうなあ。俺も抱きしめてえなあ。むしろ抱きしめられたいまである。
『甘えん坊だね?』
って微笑まれたいぜ。
「照れるな照れるな。可愛いやんな。アメちゃん食べる?」
どこからともなく飴をだしてくる。こいつは大阪のおばちゃんか。虎柄が似合いすぎるが、たしか出身は大阪じゃないだろう。
「いただくよ。ありがとう」
ころころと美味しそうにあめ玉をなめ始めた。そうしていると、年相応の少女、間違えた。
年相応の美少女に見えるから不思議だった。
「遠慮せんと好きに食べるんやで」
からからと楽しそうに笑う龍驤へ微笑みつつも。
「ん。それじゃあ失礼する」
穏やかに響が退出していった。
「ゆっくり休むんやで!」
「三人で話せば良いだろうに、何を気遣っているんだ」
せっかく三人で話せる機会なのに、なんでわざわざ出ていくのだ。もったいない。俺と龍驤に気を遣いすぎだ。
「まだまだ乙女の扱いが分かってないなあ」
意地悪な笑みで、俺の隣へと座ってきた。そのままのんびりと、だけど真面目な声で言葉を紡ぐ。
「創を独り占めにしてる罪悪感。うちにしか見せない一面を、見ざるを得ない状況」
静かに語る言葉は、龍驤の本音でもあるのだろう。独り占めね。俺が響を独り占めしているわけでもあるんだが。
「響としては複雑やろ」
「む、う?」
そういった点も含めて、響も思う所があるのかもしれない。…それでも抱きしめさせてくれた。さて。
「にっひっひ。前までならそんな嫉妬も感じさせなかったのになあ」
それはそうだ。彼女は自分の心を隠すのが上手い。
最前線時代も色々とあった。大切な思い出だ。
「時間が経つのはホンマに早いわ~」
俺と響の出来事に深くは踏み込まず。全部を抱擁する大きさで龍驤は笑っている。昔からそうだ。彼女には敵わない。