妙な距離感です
昨日旅立った龍驤を見送ってから、今日。執務室にて、いつも通りの時間が流れていた。
巣の残滓などを確認するために、響は遠征に出ている。
今日も彼女は秘書艦じゃない。だけど不思議と寂しさはなかった。
まだ彼女の温もりが残っている、というと酷く卑猥だがね。
それにまあ、やはり素直な気持ちとして。他の艦娘と関われるのは滅茶苦茶嬉しい。響の言葉でもないけど、矛盾した本音である。
だからこそ、今日来てくれた龍田が気になる。私、気になります!
いやね。性的な意味じゃなくてね。
今俺は嘘をつきました。龍田はエロいです。どエロいです。もう雰囲気がヤバいよね。エロエロだよね。
素人は形の良い乳へと目を向けるだろう。愚かな。それは天龍の領域だ。上半身は天龍の神域だ。龍田の一番の魅力は――太ももと尻だろう!!
むちむちした太ももと、形の良いエロスを与えるお尻。ハリのある尻は、撫で回したらさぞ良い感触だろう。
そうだ。何より良いのは龍田のキャラである。そっと魅力的な尻へと手を伸ばした瞬間に。
『おさわりは禁止されてます~』
なんて言われた日には暴発するね。確実に暴発する。
…のだが。何故か彼女は執務室の入り口扉で佇んでいる。滅茶苦茶距離を感じる。じっと見てみると、照れた様に微笑んで首を傾げた。
可愛いけども、さすがに遠くはなかろうか。
「た、龍田」
「どうしました~?」
声も妙に緊張していた。本当にどうしたのだ。
「それは俺が聞きたい。どうして君はそんなに距離を取っているんだ?」
これでは仕事もままならない。それが分からないはずもない。
「う~ん。色々とありましたから」
まあ確かにな。龍田は俺の日常の顔を知る前に、
「その、ボロボロな姿も見られました。さすがに恥ずかしいです」
負傷した姿を恥ずかしがる必要はないと思う。名誉ある、という言葉は嫌いだが、戦った証拠でもあるだろう。
「気が乗らないならば秘書艦は辞退してくれても良いぞ」
艦娘が好きだからこそ、気乗りしないならば無理は駄目だ。別に天龍経由で仲良くなっても良い。
仲良くなれなくても、龍田が幸せに笑える環境ならば良いのだ。
「いいえ~、これでも楽しみにしてたんですよ」
緊張しながらもそう言ってくれた。そうして、龍田が徐々に距離を詰めていく。執務机に向き合い座る俺の隣で佇んでいた。
その姿に嫌悪感は見られない。演技でなければ、彼女の言葉に嘘はないのだろう。ならば俺も嬉しいね。
「それならば良いがね」
「今日はよろしくお願いしますね~」
のんびりとした龍田らしい言葉だった。
「よろしく頼むよ」
ほわほわとした雰囲気の龍田と共に、一日が始まっていく。