妙に緊張している龍田と共に、仕事を始めていく。
とはいえ、巣を殲滅したばかりだ。大した仕事はない。
響達の帰還は夜を予定している。仕事は明日の方が多くなるだろう。そういう意味では、久々にのんびりとした感じなのだが。
気付かれないように、隣で立ち佇む彼女を見た。
上の空でぼ~っとした姿。緊張していて、何より他の者達より物理的な距離を感じる。龍田らしくないとまで言うと、少し傲慢だがね。
もう少し、余裕があっても良いと思う。
「龍田」
「は、はい。なんでしょう?」
声が震えていた。恐怖はないみたいだけども、少し傷つくぞ。
「なんでもない」
「…そうですか」
妙に気まずい間を感じ取れた。やはり距離を感じる。物理的にもそうだが、妙に緊張している。
触れあいを避けているのか? そのわりにはちらちらと見てくる。
興味はあるのだが警戒している。と言った様子だった。それ自体は構わない。龍田のそんな様子は珍しく、愛らしい。
だが、龍田に警戒される理由が分からない。
自分で言うのもなんだが、最近の俺は雰囲気が柔らかくなった。これまで秘書艦を努めてくれた、白露型の皆のおかげだ。
特に白露とのやり取りで、俺の体は随分と癒やされている。表情も柔らかくなったのだ。
無条件で怖がらせているとは思えない。どうしたものだろう。
ん? 警戒もそうだが、顔が赤いな。ぱたぱたと手で扇いでる。暑いのか?
「冷房でもつけるか?」
季節はもうそろそろ夏だ。俺は火傷痕の影響で感じづらいが、暑かったのかもしれない。
「いえ~、大丈夫ですよ」
そういう龍田の額に汗はない。暑くないのに顔が赤くなっているのか。血色が良いのだろうか?
「そうか」
またまた少し気まずい沈黙が流れていた。今、龍田の目と目が合っている。窺う様に、緊張した眼で俺を見ている。
不思議と嫌悪は感じられない。緊張もあれど、何か言いたげな様子だった。
言いだし辛いことか。それも龍田からね。う~ん。
思いついたことを聞いてみるかね。
「風邪でもひいたのか?」
秘書艦に任命されたのだ。体調不良は言いだし辛かろうよ。
「厳しい戦いだったからな。疲れが出たのも無理はない」
川内に引っ張られる形で、他の皆にも負担をかけた。特に夕立は疲れて切っていて、確か今日は休んでいるはず。
休日の夕立が、一度も顔を見せに来ていない。仲良くなってからは初めてである。相当、疲れていたのだろう。
同じく龍田の負担も重かった筈だが、どうだろうか。
「大丈夫ですよ~」
にこにこと笑いながら言葉を返してくる。本当に嬉しそうな笑みであり、龍田らしい艶やかさはない。ただ喜びを感じた。
「ふむ」
強がりには感じられなかった。というか、心配されて嬉しそうにしていた。ではどんな理由だろう?
不調を隠されていては嫌だからな。少し、踏み込んでみるか。