椅子から立ち上がり、執務机から離れた。龍田が怪訝そうな顔で見ている。やはり恐れはない。ふむ。
それならば俺も素直に確かめてみようか。
「龍田。来なさい」
呼びかけると逆らいもせずに、とことことのんびりした足取りで来た。肩と肩が触れ合う横並び。互いに立っているので、妙な感じ。
こうして近づいてくれるから、嫌われてはいないと思う。
何だろうなあ。恋愛的な感じとも違うような。さて。
「…えっと。来ました」
困った様に微笑んでいた。そんな龍田の額に手を乗せてみた。
「どれ」
「ひゃっ!?」
びくん! と大きく身を震わせて、口が閉じられないほど驚いていた。
「ど、どうした?」
さすがの俺も驚き問いかけると。
「は、はわわ!」
電か? セーラー服龍田とか破壊力が強すぎるんだが。
よし。少し冷静になってきた。それにしても……。
額に乗せた掌から熱が伝わる。かなりの高熱なんだが、大丈夫なのだろうか。
「て、提督。う、あの」
「い、嫌か?」
あまりのリアクションに手が離せない。窺う様に、涙目で見上げる龍田から目もそらせない。な、なんだろう。そこはかとなくエロスな雰囲気だ。
「いえ、そのえっと。お、おさわりは禁止されてます……」
ガチ照れじゃん。余裕ないヤツじゃん。めっちゃ可愛い。
思わず語彙力が消失してしまった。あれ? 龍田ってもっと余裕のある子じゃなかったか。こう、悪戯しても容易く受け流すような。微笑みながらさらりと流す感じ。
「「……」」互いに無言である。
目の前の彼女は真っ赤な顔をして俯いている。でも拒絶はされていない。俯く彼女を見ると、潤んだ瞳と眼が合った。
なんだろうな。胸がきゅんとして痛んでいるぞ。どうした。
背中とか触ったら、無言のままに、でもめっちゃ照れて受け入れそうだな!!
どんなリアクションを見せてくれるのだろうか? 想像だけで堪らんぞ。やっぱりサドな龍田も良いけど、受けの龍田も良い。
何が良いって、ギャップだよね。想像の中にいた彼女と違って、リアルな感じが堪らんよね。
…掌の離し時が分からん。このまま頭を撫でては駄目だろうか。良いのではなかろうか。むしろ掌を下に降ろして、胸を。ってそれは駄目だ。
やべえ。やべえよ。なんだこの色気は、破壊力が凄まじいぞ。
落ち着け。落ち着くのだ。ちょっと冗談にならない雰囲気である。
そういうのは駄目だ。愛し合った者達が行うべきだ。勢い任せのスケベは駄目だと思います。責任が取れるのか?
いや、取るけれども。――俺の胸には響がいる!
『司令官。さすがにそれは恥ずかしいよ』
と罵倒する彼女がいる!! よし。