食事も済んで、さっさと仕事を片付け終わってしまった。
もう大した仕事も残っていない。そろそろ午後三時になる頃だ。俺は執務机に向かい、龍田は側で佇んでいる。
腹も空いていないので、おやつにする必要もなかろう。
相変わらず龍田も緊張しているし、妙に浮ついた空気だった。
互いに無言の侭時間が流れていく。嫌われてはいないと思う。従順な気配だ。何を言っても、そのまま受け入れそうであった。
良い事なのかもしれないがね。素直に言えば困っている。
…窺う感じがなあ。怯えが見えると踏み込めない。ドロドロしたのも駄目だ。俺は健全にいきたいのだ。健全でいきたいのだ。おっと。間違えた。
さて、どうしたものかね。
のんびりと考え込んでいると、龍田の方から話しかけてきた。
「良いお天気ですね」
「ああ。青空が心地良い。そろそろ夕焼けが見える頃だろうか」
今日は爽やかな日だった。もうすぐ夏が来る。大分、気温も上がっている。そろそろ浜辺で遊べるかね。
海遊びが、今のご時世だと何よりの贅沢だ。楽しみである。
「はい」
「「……」」
会話終了。というか、それ以前に絶対適当な感じだったろう。
本命を隠しつつ、探るような会話の仕方だった。
よし。面倒になった。俺が恥をかくだけならば構わない。踏み込んで尋ねよう。
「龍田」
「は、はいっ!?」
不自然なほど緊張した言葉の返し方。あらためて彼女の目を見ると、潤んで揺れている。動揺していた。
「緊張するのは分かるが、遠慮はしなくて良い」
軍神などと呼ばれているがね。畏れだけではつまらない。
「何か聞きたいことや想いがあるのならば、素直に教えてくれ」
力になろうとも。俺はその為に提督をしているんだ。
「必ず実現するとは言わないが、責めたりはしない」
血に飢えていても、ヤンデレでも。所詮個性でしかないのだ。付き合えるとは言えないが、否定はしないよ。
俺の方が変態だからな!!
「あらゆる望みは個性なのだから、とりあえず話すだけでも楽になるぞ」
少なくとも抑圧し続けるよりは、誰かに語る方が楽になるだろう。素っ頓狂な言葉だったならば、それでも良いがね。
そうして彼女を見ていると、意を決したように語り始める。
「…お尻を、叩くんですよね?」
ふ~!? ふ、噴き出さなかった俺を褒めてやりたい位だ。
待て。落ち着け落ち着くんだ。というか天龍もそうだけど、何この感じ。
ダイレクトにスケベな流れが生まれている!!
ダメダメ。エッチすぎます。そういうのは恋仲だから良いんだって。プレイだから良いんだって。
まず冷静に状況を分析しよう。クールになるんだ。
「龍田…」――声をかけようとして気付いた。
潤み、今にも泣き出しそうな彼女の瞳。仄かに震えている。深い緊張が感じられた。
恐怖もある。当然だ。けど、それでも罰を求めている。
俺が、応えなくてどうする…!?
勇気を出したんだ。胸を張って生きる為に、罰を求めて俺を頼ってくれたんだ!! しかも女性からの望みだぞ!!
童貞だからどうした! 女の尻に触れるのが初めてだからどうしたと言うのだ!!
そうじゃない。そうじゃねえだろう。エロスはともかくとして、龍田が望みを口にしたのだ!! 応えられる俺でいたい!
正直に言えば尻叩きたい!! 変態だ!!
良いだろう。ならば戦争である!