早速仕事が始まっていく。とは言っても、大した仕事量は残っていない。不慣れな暁との仕事でもある。のんびりと進めていた。
今、暁はソファに座り束の間の休息を過ごしている。俺も執務机に向かってはいるが、大して緊張していない。
穏やかである。これが川内とかなら夜戦をせがんでいただろう。エロい。と油断して応えれば、普通にじゃれ合うだけだった。
滅茶苦茶楽しかったけどね。そうして、緩やかな時間が流れていく中。
警戒し、仄かな怒りを見せる彼女へ言葉を投げかける。
「暁。頭を撫でて良いか?」
「それは仕事じゃないでしょ!」
ぷんすかと怒っている。更に警戒が深まった。いかんね。
どうにも反応が良くてな。こういう事を言ってしまう。
少し深く観察してみると、怒りはあっても悲しみはなさそうだ。この際、もっと遠慮を取っ払って、暁の本音を聞いてみようか。
…まあ、からかうのが面白いと思っているのも否定はしないがね。
こうして警戒されてばかりだと、気が滅入ってしまう。
「暁。だっこをしようか」
「子供扱いしないでよ!」
む~っと拗ねた様な眼で見てきた。可愛い。こうして見ると、暁も美少女である。しかし興奮しない。
基本、俺は響以外の駆逐艦で興奮しない。と言いたい。白露型はほら、実質軽巡みたいな体型だからさ。しょうがないね。
だから、暁と接するのも微笑ましい気分になるものだ。
「飴ちゃん食べる?」
龍驤が残していったおいしい飴を、ソファに座る彼女へ差し出してみた。
「りゅ、龍驤さんみたいね…いただくわ」
困惑しつつも包装紙を剥がし、ころころと舐め始めてくれた。
「おいしいわね」「それは良かった」
少しは機嫌を良くしてくれたようだった。俺も仕事に戻ろうか。
彼女がまとめてくれた書類を処理していく。うむ。暁らしい個性的な字だ。悪くはない。癒やしを与えてくれた。
ゆったりと仕事を進めていると。
「…司令官ごめんね」
突然、暁が謝ってきた。
「ん?」
視線をそちらに向けると、顔を赤くしながら震えた声で言う。
「字、汚いでしょ」
「ふむ。綺麗ではないな」
読めなくはないが、形がよろしくない。素直な感想だ。
むっとせず。恥ずかしそうに俯いた。それは嬉しくないな。
天龍と同じく。堂々と胸を張る彼女の方が、俺個人は好ましい。からかうのも堂々としているからこそだ。
面倒くさい変態みたいな感想を抱きつつ、本音を続けて語る。
「だが一生懸命やろうとしてくれている」
これも事実だ。能力はないかもしれない。だが、必要最低限の結果は出してくれている。文句はないぞ。
短い時間だが一緒に仕事をしていて、ひたむきに取り組む姿を見たんだ。俺のやる気を出してくれたさ。
「上司として、部下を預かる身だからね。努力する者は好ましい」
そう言い切ると、大人びた表情で暁は問う。
「真剣にやって結果が出せないのと」
誰のことを聞いているのかね。
「適当にやって結果が出せる人、どっちが良いのかしら?」