大人びた暁の問いかけは、中々に難しいものだ。
頑張る者と結果を出す者に、優劣はあるのか? とても残酷な問いである。それでも虚飾に塗れた答えはいらない。
真っ直ぐに俺を見つめる彼女へ、優しい嘘なんていらないだろう。
だから、俺も提督として考えを語ろう。これまで戦い続けてきた者として、迷い悩む暁へ答えを返すんだ。
「最小単位で考えるならば後者だろう」
結果を出すのは大切だ。結果を軽んじ、過程のみに重きを置いては良い終りにならない。
終わりよければ全て良し、なんて言葉もある。その位、結果を出すのは大切なのだ。俺個人もそう思っている。
「そう、よね」
ショックを受けるというよりは、納得したように息を吐いていた。
でもそこで考えは止まれないんだよな。これは慰めとかじゃなくて、割と真面目な話。やる気のない天才と、やる気しかない凡人を見るとだ。
どう考えても後者の方が周りに受けいれられるのだ。
「しかし、あらゆる仕事は一人では完結しない」
戦場も英雄だけの場ではない。一兵卒から大将まで、精鋭からそれこそ一般兵が入り乱れている。
皆が英雄になれれば良いけども、現実的に無理なのだ。
ならば、どこで優劣がつく? それは――努力でしかない。
「その者が全力で取り組む姿に胸を打たれて」
よく努力は誰でも出来ると言われるが、大きな間違いである。
自分の全てを絞り出し続けるなんて、まともな人間には出来ない。限界に挑み続けられるのは、一種の才能だ。
そういう意味では、暁も天才なのだがね。今回は結果を出す云々と言われたから、あえて凡人とも言ったけれども。
「周りの者も頑張れる」
今回、俺が微笑ましく思ってやる気を出したのと同じ。
暁型の姉妹は暁を支えたがるし、他の艦娘も暁を好いていた。必死になり強く在ろうとする彼女を、馬鹿にする愚者は一人もいない。
奮い立ち頑張ろうとする艦娘が、この鎮守府には大勢いるんだ。
「だから戦場では、真剣な者の方がありがたい」
多くの敵を殺す英雄も大切だが、周りを生き残らせる者の方が俺は好きだ。命を預かる提督として、誤魔化しのない言葉だった。
「もっと言えば愛される者の方がありがたい」
「天龍さんみたく?」
問いかけるような、そうして試すような言葉だった。嘘は許されない。
「そう。そうして暁のようにな」
笑いかけながら言葉を返す。彼女は小さく頷き微笑んで、照れながらも言葉を返す。
「…ありがと」
紡がれたお礼の言葉には、彼女らしい幼さと真摯な想いが乗っていた。