それから少しの仕事を終えて、すっかり昼飯時になった。
「お昼にしましょ!」
随分と明るい声だ。警戒心は消えているように見えた。素直な暁らしい。打ち解けた雰囲気が心地良かった。
ふむ。それならば彼女の好物を作ろうか。暁の反応も楽しみだけれども、純粋に俺も食べたいのだ。
「俺が作ろう」
そう言って執務室に隣接した、調理用の部屋へと移る。
それなりの設備がある部屋だ。簡単な料理だったらここで作れる。…今更だが、そんな部屋を作ってしまったから、間宮食堂にお邪魔する機会が薄いのかもしれない。いずれは皆と飲み会もしたいのだがね。
手早く調理を済ませて、彼女が待つ部屋へと運ぶ
「ありがと……って、お子様ランチじゃない!」
並べた料理はお子様ランチであった。暁と言えばこれだろう。
「子供扱いしないでよね!」
良いリアクションだった。それでも強い拒絶は感じなかった。良いね。ちらちらと食べたそうにしている。うんうん。
期待以上の反応だった。愛らしいやつだ。
「好きなんだ」
暁のリアクション狙いだけじゃない。俺は純粋にお子様ランチが好きである。
なんとなく子供に戻れるような気がして、とても楽しく食事が出来るのだ。
大人に憧れる暁の気持ちも分かるが、俺としては無邪気な子供時代は得がたいと思うのである。
「好きな料理を少しずつ食べて」
チキンライスやエビフライ。タコさんウインナー、ハンバーグにからあげ。好物ばかりを揃えている。ほっと温まるコーンスープも素晴らしい。
我ながらよく作り上げた。こうして作ると分かるけど、大した手間がかかっている料理だ。
「しかも最後は素敵なデザートだ」
みかんゼリーを用意した。さっぱりとした甘みと酸味が良い。
「これ程の贅沢も早々あるまいよ」
しかも今は実質戦時中だ。好物だけを選んで食べる最高の贅沢である。
「そうかしら?」
意地を張る暁も本当は分かっているのだ。
困った様に彼女は微笑む。…思っていたより、大人な印象を覚えた。ふむ。幼さは残しつつも、艦娘として成熟した部分もあるのか。
いや下ネタじゃなくて。暁の水平線に勝利を刻む的な話じゃなくて。
まあ、戦場を何度も経験しているんだ。大人びた部分があっても不思議じゃない。
「そうだとも」
迷わずに答えると、小さく頷いてくれた。さて。
「「いただきます」」
二人で声を合わせて食事を始める。一口、チキンライスを食べてみた。美味い。中々の出来だ。
「…ん。おいし」
ほっと嬉しそうに暁が笑ってくれた。作りがいのある反応だった。これが世にいるお母さん、或いはお父さんの気持ちなのだろうか?
「そいつは良かった」
胸が温まる時間を彼女と過ごしていく。