朝。出会って、改めて簡単に自己紹介を終えた。今日の仕事が始まった。
凜とした美人な雰囲気とは裏腹に、海風は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
「提督、お茶を淹れますね」
「ありがとう」
「ふふ」
ただお礼を言っただけで、本当に嬉しそうな微笑みを見せてくれた。可愛い。
白露とはまた違った世話焼き気質を感じられた。なのに、妙に張り合っているんだよな。一番として引っ張るという面では、やはり白露だと思うのだけど。
海風はそれが嫌なのかもしれない。不仲とまではいかなくても、それなりに思う所はありそうだった。
一口、緑茶を飲んだ。
「うまい」
ふんわりと広がる香り。茶葉の甘みと旨味を引き出しつつ、変に後味が残らない爽やかな味わいだ。
適切な温度と手順で淹れなければ、こうまで美味しくはならない。
「お茶を淹れるのは自信があります。…一番艦ですからね」
自信ありげな微笑みは素直に愛らしいね。しかし。
「ふむ」
白露への張り合いを感じつつも、一緒に仕事を片付けていく。
そうすると、今度は彼女の高い能力に驚かされた。
前日が暁だったのもあるが、格段に仕事を片付けていく。まあ、暁の良さは周りを奮起させる所なので、比べるのは駄目だけども。
それでも、海風もまた素晴らしかった。
とても綺麗な字。処理能力の高さ。日頃の努力を感じられる。
実務だけではない。ふと眼が合えば優しく微笑んで、そこに媚びは感じられない。心の柔らかさを感じる。
何より美人なのだ。面立ちだけではない。
振る舞う所作全てに落ち着きと、柔らかさを感じる。
表現は少し可笑しいが、母性のような感じだった。胸が大きいからな! 多分尻もエロいからな! …関係ないけども。
一緒に仕事をしていて、随分と助かる相手だ。お礼を言おうと思った矢先。
「提督は仕事が早いですね」
彼女から感心したように言われてしまった。本当に嬉しそうな笑みだった。
「それでいて丁寧です」
うんうんと頷きながら、誇らしげに言われている。どうにも照れくさい。真っ直ぐな賞賛と尊敬を感じられた。
「海風には敵わんよ」
素直に言葉を返すと、これまた誇らしげに豊満な胸を張って。
「ありがとうございます。ふふ。一番艦ですので」
と言い切ってくる。一番艦。ううむ。
やはり、白露への張り合いだけがらしくない。
もっと言えば、少しだけ焦りも感じられた。まさか憎しみ? 嫌悪感?
共に戦う戦友とは言っても、合わないのはしょうがないがね。
ううむ。そういうネガティブな感じでもないんだよな。初対面だから張り切っているだけなら良いがね。どうしようか。