そうして、海風と二人の時間が流れていく。昼時。そろそろ腹が減ってくる時間だ。彼女は当たり前のように察して提案する。
「昼食にしましょうか」
静かに微笑んで、用意の為に執務室から退出した。
「…落ち着きもある」
共に過ごしていて本当に思うのだが、気づかいが素晴らしい。
喉が渇けばお茶を、少し疲れれば気づかいの言葉。俺が何を言うまでもなく。海風から提案してくれる。
何より素晴らしいのは、押しつけがましくない所。本当に自然で慣れているから、素直に彼女へ甘えられるのだ。
白露とは違った魅力を見せてもらえている。
「だからこそ張り合いはなあ」
もったいないような。そうやってのんびりしていると。
「提督、扉を開けていただけますか?」
海風が戻ってきた。声をかけてノックの代わりにしている。これが白露であれば、勢い良く開けて入っていただろう。
それが悪いのではない。俺個人はそんな白露の快活さが好きだ。ただ海風の気づかいも愛おしい。それだけの事である。
海風が用意してくれた昼食を並べる。
「作ってくれてありがとう」
「いえいえ」
オムライス、デザートはオレンジゼリーだ。さすがにゼリーは市販の物だったが、オムライスは彼女お手製の料理であった。
「「いただきます」」
さっそく、一口いただく。
「おいしいですか?」
不安げに窺う海風へと。
「ああ。料理が上手だな」
ふんわりと口の中で卵がほどけた。ソレに包まれたチキンライスが良い味を出している。バターの香りはしつこすぎず。
鳥肉もしっとりとしている。下処理と火加減が完璧だった。
「ふふっ。海風型…失礼。改白露型の一番艦として当然の事です」
「ふむ」
「白露とは違いますので」
ここまでの付き合いだけでも、滅茶苦茶対抗意識が強いぞ。見ていて微笑ましいような。少しだけ悲しいような。
俺が、白露に思い入れが強すぎる自覚はある。川内がこの鎮守府で初めての相手ならば、白露は柔らかく緩ませてくれた初めての相手。
大きな抱擁力と無邪気な人懐っこさで、俺の心を許してくれた。
思えば、不眠が改善されたのも彼女が切欠だったのだ。
そんな白露を悪く言う感じはいただけない。嫌な感じ! である。村雨である。
さてはて。とはいえ、海風の気持ちも分からないではない。
海風としては、自身が一番艦であると思うのは当然だ。
ならばと、元になった白露を同じ一番艦として意識するのは分かる。
何より白露も一番艦として、かなりアピールしている。
彼女がよくいっちば~ん! と嬉しそうに誇らしげな姿でいるのを、俺は今までの付き合いで見てきた。
まだこの鎮守府に来てから一年も経っていないけど、白露の事は事前知識とのすり合わせで随分と知った。
その上で、海風が抱える心だ。俺が知っている艦これでは、もっと抱擁力がある子だった。
現在、完全に戦争が展開されていて、武力が求められている状況。つまりは有能な者ほど、危険にさらされるのだ。
優しい海風がどうあろうとするかなんて、考えるまでもない。
まあ、その優しいイメージも押しつけにすぎないのだけど。どうしたものかね?