真昼を超えて二時位。異様なほどの静けさが執務室に広がっている。鼓動音が聞こえる。どこからだろう。考えるまでもない。
今、俺の頭を抱きかかえている海風から聞こえる。
豊満な胸に包まれていた。熱い。汗の匂いを感じた。
仄かに甘い匂いだ。おかしい。海風の体温が伝わる。ぎゅっとした力は、布越しでも胸の柔らかさを感じる。制服、そこから先の下着。更に先の胸の感触まで、全てが俺の顔に伝わっている。
とくん、とくんと聞こえる心臓の音が、俺の心を緩ませてくれた。
あ~癒やされている。やばい。興奮しないぞ。いや確かにやばい感じなのだけども。普通に興奮しそうなのだけど。
全てを包み込む抱擁力と、許しの感じ。
なんだろう。この柔らかさと体温のコンボがヤバい。少し泣き出しそうだった。…こういう点も白露とは違うんだよな。
彼女に抱きかかえられた時はヤバかった。
海風の感じは違う。文字通り、甘えきっている。男女の仲とは違って、受けいれられている。
大きさは違うけども、龍驤に似ていた。ああ。落ち着く。
「…提督も抱き心地が良いですね。山風を思い出します」
とても優しく、愛おしさに満ちた声だった。彼女の姉妹達への接し方が分かる。愛情深い海風の声は、素直に好ましい。
「う、海風の抱擁はどうでしょうか!?」
そうして照れる愛らしさもある。姉の如き抱擁力と、妹の如き愛らしさ。最強だ。海風は最も完璧に近い存在。
落ち着け。落ち着こう。どうしたのだ。
とりあえず返答しよう。
「あ、暖かいぞ」
本当に暖かい。谷間って熱いんだな。谷間の汗の匂いも素晴らしい。変態だ。変態だとも。
いやでも臭くはないのだ。何だろう。不思議である。戦場の経験で、女の子=良い匂いではないのは知っている。
それはそれで堪らないのだけども。変態だ。悪いか。
「そうですか…えへへ」
とくんと、一際高い心音が聞こえてきた。声だけでなく。心臓が海風の喜びを伝えてくれていた。
滅茶苦茶照れるぜ。やばいな。抱擁ってこんなに良いものなのか。響にも俺の全てが伝わったのかな。
うむ。こうして抱きしめられているのに、他の人と比べるなよ。変態ではない。最低である。
ああ、暖かいな。なんでこんなに暖かくて、愛らしい子なのに白露と比べるんだ。海風だから良いんじゃないか。
「――白露が抱擁だけだったなら、海風は」
「海風…?」
その発言はやばいって! 普通の男だったら襲われているぞ。これは誘われていると思われても仕方ない。
ど、どうする。いやどうするじゃなくて、どう考えても暴走して。
「頭も撫でます!」
はい。暴走していたのは俺の方でした。でもしょうがないね。童貞だからしょうがないね。