あっ。だめだこれ。理性が融けるやつだ。艶めかしい雰囲気が混ざっている。ここで素直に暴走出来れば、俺はもっと楽しめるのだろうか?
ふと、響の悲しむ姿が見えた。
『それは大事なことだよ』
諭す彼女の声さえ聞こえそうだった。うん。冷静になれたぞ。勢いに任せて、何より海風のコンプレックスにつけこんでのエロスなど。
変態の風上にも置けぬ所業。エロスは楽しみきってこそ。
「もう十分だ」
少し偉そうな言葉だったが、吐き出して彼女との抱擁を解く。顔に涼しさを感じる。谷間の熱がなくなったからだろう。
「あっ、そうですね…」
ちょっと残念そうにしている。やばい。ドキドキしてくるぞ。
落ち着こう。海風の二属性の破壊力と、純粋に巨乳のパワーで融かされている。ふふふ。白露の抱擁の経験がなければ、もう駄目だったかもしれない。
俺は艦娘達に支えられて、この場で我慢出来たのだ。なんて誇らしい事だろう。…俺もなあ。力一杯揉めたらなあ。
おっと。本音が漏れてしまった。いかんいかん。精神が元気になった分、こうしてすぐに漏れてしまうのだ。
「どうでしょうか。海風は良かったですか」
「お、おう」
その台詞は駄目だって! もう駄目だって! 次は直にだなって言いたくなるもの。誘っているのか。良いのか。大人の扉を開いて良いのか。
勝負を挑んできた雌を相手に、退く雄がいるか?
くっ。俺の内の範馬勇次郎が叫んでいる。
強くなりたければ喰らえ!! うっ、ふう。落ち着こう。
冷静に考えて、まず白露達との関係性は最悪になる。特に白露は、海風を気にかけている。それなのに俺が海風へ手を出せば、気まずくなるだろう。
しかもその理由が、白露へのコンプレックスを利用してだ。
そうして次の理由だが――俺は童貞だ。このまま流れで致せるのならば、童貞ではない。一人遊びと妄想だけが得意であり。
『提督、海風は準備が出来てます…』
などと言われてみろ。それだけで達する。
最後に、最大の理由だが……初めて位好き合った人同士でやるべきだ。俺が惚れているのは艦娘で、萌えである。
響とか、かなり深く個人的に接してきた相手。偉そうな言い方だがね。俺はそんな相手は個人的に好きだとも。
だが、海風は知ったばかりだ。もっと色んな表情があるのだろう。今まで生きてきたのだろう。そんな彼女を知らない。
運命の出会いは否定しない。必然と唐突な恋も否定しない。
白馬の王子様も、曲がり角食パンも好きだ。。
それでも、それでも俺は海風の初体験が良いモノであってほしいし、こんな流れでは嫌だと思う。
「駄目でしたか?」
不安げに揺れる海風へと、素直に言葉を返す。
「良かったぞ」
「…えへへ」
照れて嬉しそうに微笑んでいた。可愛い。
「それで、この後はどうなったんですか」
うきうきとしている。純粋なのか。それとも裏があるのか。どちらも好きだ。裏があるビッチタイプはエロエロ、純粋は萌え萌えである。
ふ~本当に艦娘は最高だぜ!!
「最終的には膝枕で癒やしてもらったな」
「な、ならば海風は…!」
暴走しそうな雰囲気。そろそろ止めるか。
「――もういい。そういうのは駄目だぞ」