「待て待て!」
「…すけべだねえ」
心底から楽しそうに言いやがった。にやにやとしている。ある意味で信頼を感じるぜ。
「しみじみと言うじゃない」
「え~?」
へらへらと笑いながら近づいてくる。対面のソファーに川内が座った。きしりと軋む音。相変わらず楽しそうな子だ。
海風もようやく状況を認識したのか、慌てながら言う。
「川内さん、違うんです。私が」
追い詰められた彼女の様子を見て、優しい顔で川内は答える。
「うんうん」
白露とは別の意味で、川内も抱擁力がすごい。ただ頷いているだけで、不思議と落ち着く雰囲気があるのだ。
にへらと川内が笑う。責める心は欠片もなく。問う。
「で、なんだって海風はそんな事をしてるのさ」
当然の疑問だった。俺も聞きたい位だった。まあ、迫られてそんな余裕は消えていたけどね! しょうがないね。
「提督が好きなの?」
ぶほっ! い、いやいや。そういう意味で好きなわけないし。
だって俺だぜ? 俺を愛してくれる仲間達はいたし、此処の皆とも極力仲良くしたいけどさ。恋愛面は想像しがたい。
…唯一の例外が響だったり。なんてな。俺は響にそういう意味で受け入れてもらえるのかな?
実際恋愛として触れ合うのならば、半端なくすけべな俺の心も伝わるわけでさ。怖い。何を落ち込んでいるのやら。
今は海風だ。しっかりと俺も聞いていよう。
「尊敬、してます」
じんわりと胸が熱くなる声色だった。普通に嬉しい。あくまでも軍神としての評価だが、可愛い女の子に慕われて嫌な男はいない。
「ん。私も尊敬してるよ」
川内から尊敬されていると思うと、不思議と照れる。
なんというか、大分気安い仲になっているつもりだ。変に壁を感じるのは嫌である。我ながら強欲であった。
「尊敬してる相手に抱かれたいって、海風は思ってるの?」
本当に率直な言葉だな。聞いていてむずむずしてきたぞ。
「それは…」
困った様に俯いていた。仄かに頬が赤い。なんかエロい雰囲気だった。いやだめだ。童貞捨てるチャンスとか思っちゃ駄目だ。
初めては好きな者同士が良いのだ。流れで捨てるなんて、童貞と、なによりおそらく処女の海風に失礼すぎる。
それにしても、川内は随分と冷静に心を解き明かしているな。海風も落ち着きを取り戻していた。素晴らしい。
「まあ少し落ち着きなよ」
川内がごろりとソファに寝転がった。魅力的な細くしなやかな脚をばたつかせて。
「提督、お茶~」
完全に緩みきっている態度である。しかし、見慣れている姿でもあった。ここまで気を許してくれていると、本当に嬉しい。
「…川内さんはとてもリラックスしてますね」
「それなりの付き合いだからね」
白露型と順番で向き合うまでは、ほぼ毎日顔を合わせていた。夜戦の為の昼寝も執務室でしていたのだ。
その度に、俺は彼女の脚を見てしまっていた。
…ふう。しょうがないね。でも触れることはもちろんできなかったね。もっとしょうがないね。
「軍を意識してない場だったら、緩んじゃうかな」
「俺は気にしてないぞ。嬉しい位だ」
素直な言葉を返してみると。
「ね~」
嬉しそうにニコニコと笑っている。可愛いやつめ。こういう無邪気な笑顔が、川内の一番の魅力なのかもな。
いやまあ、最高の手触りだった髪とか。本当に魅力的な脚とか。意外とありそうな胸とか。エロい尻なんて。
落ち着け。魅力が溢れすぎている。
「海風も気をつかいすぎず。川内に相談でもしてみたらどうだ?」
「で、結局海風はどしたのさ」