海風が抱える想い。一番艦として、誰よりも前に立ち危険へ向かう白露への心。心配、不安、恐怖。自己嫌悪してしまうのだ。
どうして守られてしまうのだろう? なんで、自分は一番艦じゃないのだろう。戦場で積もってしまった感情だった。
しっかりと海風の話を聞いて、噛みしめる様に頷いた。だけど迷いなく。気負いもなしに川内は語る。
「でも、私が白露を見る限りさ」
のんびりとした口調は優しい。俺では出せない。
俺は艦娘じゃないのだ。提督として甘えさせられても、共に戦う仲間としてはいられない。しょうがないのだがね。
「彼女は一番艦じゃなかったとしても、頑張ろうとする子だよ」
それはそうだろう。海風も本当は分かっているのだ。
川内の言葉を聞いて、困った様に俯いている。さてはて。そんな海風の様子を見て、彼女も困ったように言葉を続ける。
「それこそ神通だって一番艦じゃないけど、私より遙かに強いし」
神通は経験こそまだ薄いが、阿武隈に匹敵する能力だ。
いやむしろ、最前線の経験が薄いのにそれだけの強さなのだから、本格的に死線を越えられれば、どれほどの戦士になるのやら。
そんな神通は川内の妹艦である。
「先に生まれたかはあんまり関係ないと思うけどね」
深い実感と諦観すら感じる言葉である。川内は川内で、少し思う所があるのだろうか? いつもは、欠片も出さない強さもまた彼女らしい。
「それでも私は…」
諦められない。姉妹仲が悪いのではない。大切に思える相手だからこそ、守られたくない。
戦える気質なのも影響している。海風は確かに、一番艦としての、姉としての在り方も強くあるのだ。
それはそれとして、妹属性の海風も可愛いよね。…シリアスすぎて空気が緩まないぞ。どうしよう。
「言いたい事は分かるけどね」
やはり困った風に笑いながらも、真剣な声で。
「結局、海風がどうしたいかによるとは思う」
そうなんだよな。最終的には心が大切なのだ。
周りを見たいかどうか。俺は月並みな言葉しか言えない。軍神とか言われても、所詮は人である。ちょっとスケベなだけだ。
女の子の愛らしく魅力的な所が気になるだけなのだ。うむ。考えてみても変態の思考であった。
「でもね。その過程で、提督を困らせてもしょうがないよ」
言葉を聞いて、海風が俺の方を見た。微笑みを返す。仄かに頬を染めて、また俯いてしまった。冷静になって、先程の振る舞いを思い出したのだろう。
むしろ、そうして照れた方がエロい…じゃなかった。
落ち着いてくれて何よりだ。うむうむ。
「白露より尽くしたからって、海風の心を通してくれるとは限らないし」
それはそうだな。想いに応えようとはするけど。
「公私混同はしないタイプでしょ」
しないのではなく出来ない。俺がこれまで失い続けてきたモノと、守り続けたモノに誓って、戦場で俺は人じゃいられない。
軍神として戦う。最適化して戦い抜いてやる。
「良くも悪くもさ。引っくるめて背負ってくれてる」
捨て切れない思いだってあるさ。矛盾しているけど、俺は人でもあるのだ。終戦、を素直に喜べるだけじゃないとの同じ。
「そんな人だから私は尊敬してるの」
真っ直ぐな好意で川内が見てきた。彼女は微笑み、自信ありげに俺を見てくれていた。
「海風は違う?」
「…その通りです」
「あまり褒めてくれるな。さすがに照れるぞ」
二人の純粋な敬意と好意に耐えきれず言ってしまった。
川内がにひりとでも言えそうな笑みを浮かべて、立ち上がり俺の前に佇む。そうして愛おしそうに。
「へっへ~、可愛いやつめ」
頭を撫でてきた。
「くすぐったいじゃないか」