「私の手が受け入れられないの?」
わしゃわしゃと手を強めてきた。それなのに心地良い。髪型が乱れるが、川内の親しみを感じて堪らない気持ちになれた。
で、できればそんな手つきで股間を…冗談です。
落ち着け。先程海風に誘われた感じで、どうにも心が乱れている。いつもの事か。変態だった。本当に落ち着こう。
「ふふっ。酔っ払いかね」
俺が言葉を返せば。
「へっへ~」
いたずらっ子な笑みで返してくれた。可愛い。同じ長女でも、白露とはまた違った感じなのだ。強いて言うならば悪友みたい。
そう。白露はお姉ちゃんであり、幼なじみ的存在。川内は姉貴であり、悪友みたいな存在だ。
何を真面目に考えているのだろう。シリアスな雰囲気が続きすぎて、少々心が壊れているかもしれない。いつもの事か。変態だ。
まあ何にせよ、川内のおかげで海風も落ち着いた。良い事である。少し残念とは思っていないぞ。本当だよ。
「さ、さすがにそれは敬意が足りませんよ」
わたわたと慌てる海風萌え。別に気にしないんだけどな。というか、滅茶苦茶嬉しいし。基本的に俺は艦娘という存在が愛おしく。
何より、数ヶ月程度の付き合いがあり、尚且つ戦場を一度共にした相手だ。
…ぶち切れた俺を落ち着かせてくれた恩がある。それに、共にいて気疲れしない相手なのだ。もう少し慣れ親しんでくれても嬉しいぜ。
「罰を与えちゃう?」
にやにやとしていた。曇らせたくない笑みだ。
「さて、どうしたものかね」
からかうのも捨てがたい。あえて、真面目な表情で言葉を返すと。
「や、やめて。私の体が目当てなのね!」
くねくねとした動きで体を隠していた。面白い。
「…ふむ。どうしてくれようか」
眼光鋭く。仄かに威圧感を出してみる。川内は楽しそうに笑ってくれたが。
「あの、その。川内さんは親しみで」
海風が慌てて止めに来た。真面目にやると思われたのか。少しショックだ。
「うむ。分かっているぞ。冗談だから気にするな」
空気を緩めると安心した様に息を吐いた。川内だけが、どこか不満げに言葉を返してくる。
「え~? 海風に迫られて鼻の下を伸ばしてたのに?」
「それとこれとは別問題だ。美少女に迫られて、動揺しない男はそういない」
「えっと、それは、あの」
滅茶苦茶照れて顔を真っ赤にしていた。
「「可愛い」」
思わず声が合う程の可愛さである。
「…ううっ」
可愛すぎかよ。さてはて。真面目な話もしておこうか。
「まあ、今は軍規が必要な場面ではあるまい」
逆に言えば、必要な場面ならば川内はしっかりと出来る。かなり信頼しているのだ。それはそれとして、海風の話だ。
「少し空気が緩んだからな。真面目な話もしておこう」
天龍の劣等感とも違う。彼女の気質は柔らかい。
ならば、ありふれた言葉を贈ろう。
「望んだ場にいたいのならば強くなりなさい」
当たり前の事だ。しかし、これしかないのだ。
「それは純粋な力だけではなく」
暴力だけが目的を満たすのではない。
「よく考え、欲し、努めて、ひたすらに進み続けなさい」
何かを真剣に愛して、大切なモノを守れる己である。それが一番難しい。
「そうすれば求めたモノが得られなくても、何かは残るはずだ」
「…はい」