良い返事だ。少しは迷いが晴れただろうか? 完全にぬぐい去れたとは思えないけども、役に立てたなら嬉しいぜ。
最後にもう一つだけ、恥ずかしいが本音を語ろうか。
「ただどうしても己を認められず」
かつての俺は仲間達に許された。そうして、此処で戦場の淀みすら癒やされている。もう終戦すら考えられる状況なのだ。
ああ本当に。ならば俺は救ってくれた艦娘達へ、少しでもと思うのは当然だろうさ。
「信じられないと言うのならば」
続く言葉は素直に恥ずかしい。だけど躊躇わないで。
「俺は海風を好ましく思っている」
真っ直ぐに目を見ながら言葉を紡いだ。
…やっぱり、なんか恥ずかしいぞ。どうにもなあ。こういう所が俺は良くないのだろう。響にだって素直に好意を告げられていない。
もう戦争は終わるのだ。俺ももっと変わらないといけない。
「君の姉妹達も確実にそうだろうさ」
これは断言出来る。改白露型は海風が初めてだけど、他の白露型の皆は海風も慕っていた。本当に仲の良い姉妹である。
「ありふれた言葉だが、君が愛する者の信頼を信じてはくれないだろうか」
「…提督は優しいですね」
ほうっと花開く笑みで言葉を返してくれた。うん。少しでも、ほんの少しでも彼女が自分を許してやれると嬉しいね。
「優しすぎるけどね~」
「そうでもないさ」
優しい男ならば、そもそも海風の誘惑に心は揺れないだろう。今でも微妙に心臓がうるさい。だってねえ。あんなねえ。
落ち着け。響の言葉を思い出せ。
『司令官』
ああ~良いねえ。しかしまあ、なんかこう。艦娘の皆と接していると、本当に響のありがたさが分かる。
文句があるわけじゃない。萌えや癒やしは皆と共有している。
だけど、やっぱり俺にとって響は特別なんだな。
ほら、海風が前にいるのに響も考えてしまう。俺はやはり優しくはないぞ。
「本当に俺が優しいのならば、きっと海風の悩みを消し去れたのだろう」
「そう思ってくれる事が優しさなんだって。ほら、良い子良い子」
また頭を撫でられてしまった。
「くすぐったいぞ」「あはは!」
そうして川内とじゃれ合っていると。
「…いいこ、いいこです」
海風も控えめに俺の頭を撫でてくる。川内より随分と優しい手つきだ。
「う、海風?」
「駄目でしょうか」
凜とした瞳で真っ直ぐに見つめてくる。微笑みは柔らかく。先程の誘惑と違い、澄んだ雰囲気が照れくさい。
優しいお姉さんに認められている感じだった。やばい。普通に照れる。
「いや、その」
言葉が美味く出てこなかった。先程までの格好つけはどこに消えたのだ。本当に何も返せない。
くすりと、愛おしそうに海風が微笑む。川内が楽しそうに笑った。ずるいぞ! 二人がかりとか卑怯だからな!
「照れてるね。海風、好機だよ。夜戦だね!」
「川内~?」
「好機です」
「海風もか!?」
楽しそうな二人の雰囲気につられて、じゃれ合いながら。一日が過ぎていった。